黒夜行

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純平、考え直せ(奥田英朗)

内容に入ろうと思います。
主人公は、歌舞伎町のちんぴらである坂本純平。埼玉生まれで、ずっと暴走族で、東京に来てからはずっと、組の兄貴である北島を慕って、下っ端で雑用ばっかりの生活に耐えている。ちょっと古いタイプの男で、昔の任侠映画の登場人物のような喋り方に憧れ、でも童顔なのもあって歌舞伎町では怖がられずオモチャにされ、でも男気が溢れているので、困った人を見かけると助けずにはいられない、という、なかなか憎めない男です。
そんな純平は、親分から指令を受ける。対立する組の幹部を殺せ、というのだ。要するにヒットマン。
名を上げるチャンスと意気込む純平。娑婆と別れるため、3日の猶予と数十万の大金が与えられた。これで残された時間を有意義に過ごせ、ということだ。
東京に出てきてから、親しく関わる人間もほとんどいなかった純平。しかしその3日間、何故か純平は様々な人と関わることになり…。
というような話です。
ほどほど、という感じでしょうか。悪くはないけど、という感じです。
設定は凄く面白いと思うんですね。ヤクザを扱った作品っていうのは多種多様出てると思うんだけど、ヒットマンになるための3日間の猶予、を描いた作品というのはなかなかないんじゃないかな、と思います。その設定は充分に面白いし、素敵だなと思いました。
純平のキャラクターもなかなか面白いです。ヤクザなんだけど、歌舞伎町にいる女性にはからかわれる。まだ新米で、啖呵の切り方ぐらいは堂に入ってるけど、あとは力で押し切るぐらいしか能がない。歌舞伎町を歩けばみんなに声を掛けられるけど、親しい人がいるわけではない。そういう、何だか応援したくなるようなキャラクターの設定で、強いんだか弱いんだかよく分からない純平が、色んな出来事に右往左往する感じは結構楽しいです。
純平以外に出てくるキャラクターもなかなか素敵。一番好きなのは、元大学教授のジイサン。いい味だしてるんだよなぁ、この人。映像化したら、名脇役っていう感じの立ち位置になりそうな感じ。他にも、なるほどこれが歌舞伎町なのか、と思わせるような癖のあるキャラクターがたくさん出てきて、結構楽しいです。
ただ、そういう面白い要素は色々とあるんだけど、どうも全体的にはあまりはじけていない感じがする。どこが悪い、というのでもないと思うんだけど、どことなく盛り上がりに欠ける感じ。なんなんだろうなぁ。この作品は、軽さを楽しむ感じだと思うから、作品が軽いということがマイナスなわけでもないと思うし、ちょっと考えてもあまりうまく説明できない感じがします。なんとなくの表現で言えば、凄く高級な食材をたくさん使ってるのに、完成した料理はほどほどの味、という感じでしょうか。一つ一つの要素は割といいと思うんだけど、全体的にはほどほど、という感じがしてしまう。
あと、純平がヒットマンをやるというのを、行きずりの女がネット掲示板に書いてしまって、ネット上で盛り上がる(掲示板の書き込みが小説内に出てくる)というのがあるんだけど、これは必要だったのかなぁ、と思ってしまいました。正直、ネット掲示板で盛り上がっている、というのが、作品全体にさほど大きな影響を与えてない感じがします。僕は小説内にネット掲示板の書き込み的な描写が出てくるのがそんなに好きではないんだけど、でもそれが作品と密接に関わっている、というのならまあいいかと思うような人間です。ただ本書の場合、ネット掲示板での盛り上がりが、どうしても作品全体に大きな影響を与えていない感じがするんで、そうなるとそのくだり全般は要らないのではないか、という感じがしてしまうんですね。
まあそんなわけで、ほどほどという感じの作品でした。悪くはないんだけど、イマイチ突き抜けていない感じです。

奥田英朗「純平、考え直せ」





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Comment

[4044]

全く同じような感想を持ちました。
あの、ネットの掲示板は必要ではないと感じましたねー。
出すなら出すで、某掲示板のように書き込んだ「時間」を表示するべきだったと思います。
奥田さんの作品は全て読んでいるのですが、ワースト1,2,3に入る作品でした。

[4045]

やっぱりそうですよね。
あのネット掲示板のくだりは、ちょっと不要ですよね。
もしあれに類するものを取り入れたかったのなら、
もう少し別のやり口があったのではないか、と無責任にですが思ってしまいます。
設定とキャラクターはなかなか面白かったと思うので、
ちょっとそれらをうまく活かしきれなかったのだな、という印象でした。
次作に期待、ですね。

[4046]

私も期待して買ったけど残念でした。即売ってもいいかなで。
最後がなんか曖昧模糊としており、純平君は結局どうしたかったのか、歯切れが悪いなという感じで。

[4047]

そうなんですよね。ちょっと物足りなさがありますよね。
これまでの素晴らしい奥田作品を読んでる身としては、
やっぱりもう少し素敵な作品を期待しちゃいます。
ラストを読者の想像に委ねる、というスタイルは、まあよくあるんで、それ自体は悪くなかったと僕は思いましたけども。
ただ、ラストに限らず、全体的にちょっと曖昧な感じがしました。

[4048]

こんにちは。
私も今読み終えたところです。奥田さんの作品は軽い(伊良部シリーズ、サウスバウンド)か重い(オリンピックの身代金etc)のどちらかでしょうが、この作品はどっちつかずという感じで終わりましたね。
「純平、考え直せ」、これが奥田さんが言いたかったことかも知れませんよ(笑)。無責任なネットの書き込みは不要とのご意見が多いようですが、世の中の軽薄さを強調する役目は果たしていましたよね。純平の行動そのものではない部分で勝手に盛り上がっていましたもの。
通りすがりさんがお書きのように西尾老人の存在はなかなかでしたね。拉致され軟禁された場所で、やくざ相手に独裁政治でないとやくざの存在価値はないとか、純平にも殺される側と殺す側では殺される側の方が人間が一格上だ、と語ったりしていて、映画にするならこの役は亡くなった笠智衆さんかな?と思いました。ヒットマンの純平にとってはキツイ言葉でしたね。
ラスト近くでコインランドリーに純平に関わった様々な人物が幻覚(実際はそうなのでしょうが)のように登場し純平を見送るシーンがありましたね。まるで戦場に赴く兵士を見送るような感じで。結局どうなるのかなぁ、と先を急ぐ思いで読みましたら、最後は…一寸肩すかしでした(泣)。出所後の純平を読みたかったです!!

[4049]

こんばんわです。なんだか雨が降ってきちゃいましたよ。
そうなんですよね。確かに、どっちつかずという表現がぴったりかもしれません。新しいことにチャレンジしようとしたのかもしれませんが、ちょっと残念でしたよね。
ネットの情報は、まあ使い様なんですけどね。使い方がうまくない人が多い、ってことなんでしょう。まあ僕自身がうまいかどうかは別として、ですが。まあ、純平の行動とは関係ないところで盛り上がる、というのは、ああいう掲示板の正しき(僕自身がそれを善しとしているわけではありませんが)使い方ではありますね。
西尾老人はいい味出してましたよね。素晴らしかったと思います。個人的には、主人公の存在感をかなり喰っている印象でした。インパクトのあるキャラで、笠智衆さんというのはちょっと知りませんが、存在感のある俳優さんにやって欲しいですね。
ラストの展開は、確かにちょっとなんとも言えなかったですね。そもそも順平は、実際にヒットマンとしての役割を果たしたんでしょうかね?案外失敗してそうな気もします(笑)。奥田さんは次作に期待しましょう!

[4050]

ネットの書き込みは純平の行動には全く影響を与えてない。
これはこれで純平のキャラクターを際立たせる意味で、効果的だったのかと思います。
おれは奥田さんのこういうシニカルさが好きです。(笑)

[4051]

なるほど、そういう見方もあるのですね。
ただ、ネットの書き込みを使う以外の手段でも、純平のキャラクターを際立たせることは出来たんじゃないかなぁ、と思ってしまうんですね。
敢えてネットの書き込みを作中で描くことにした、という理由が、うまく伝わってこなかった気もします。
まあ、好みの問題なんでしょうけどね。

[4052]

ネットの書き込みが純平の考動に、何の影響を与えていないってのは
言われてみると確かに!!ですね
賛否両論でしょうが、私自身は最後の結末はしっくりこなかったです。
奥田さんの作品は全体的に大好きですが 比較的軽め側がサクサク
読めて大好きですね ドラさんの言う(伊良部シリーズ、サウスバウンド)なんかが
この作品では、ジイサンが好きでしたね~時々出てくる言葉の深さは
沁みました! 「健康の価値は病気にならないと分からないのと同様、若さの価値は歳をとらないと分からない。まこと神様は意地が悪い」そのと~り

[4053]

ネットの書き込みの描写が、作品に必要だったとはどうしても思えないんですよね。蛇足という感じがしました。純平の行動に影響を与えないにしても、もう少し物語自体と絡んで欲しかったなぁという感じがしましたです。
僕は、もちろん伊良部シリーズもサウスバウンドも大好きですけど、「オリンピックの身代金」みたいな硬派な奴も結構好きです。硬軟使い分けられる巧い作家さんですよね。
僕もジイサンが好きでした!作品全体のいいアクセントになっていましたよねー。

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純平、考え直せ/奥田英朗

◆読んだ本◆・書名:純平、考え直せ・著者:奥田英朗・定価:1,400円・出版社:光文社・発行日:2011/1/25◆おすすめ度◆・ユーモア小説度:★★★・若いヤクザのはかない青春度:★★★・考...

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

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2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
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新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
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3位 高野和明「ジェノサイド
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)