黒夜行

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リリイの籠(豊島ミホ)

内容に入ろうと思います。
本書は、女子高を舞台にした連作短編集です。

「銀杏泥棒は金色」
美術部員として展覧の準備に入った春は、先生に「好きなものを書きなさい」と言われて困ってしまう。私は、人より嫌いなものが多い。
ある日、美術部の部室から見かけた女の子が金色に輝いて見えた。私は、あの子を描こう…

「ポニーテール・ドリーム」
学校で「えみ先生」と呼ばれている化学の教師。ぎゃーぎゃーとはしゃぐ彼女らを見て、自分の窓際のような高校時代を思い出す。
受験が終わったら髪の毛を伸ばそうと思っていたあの頃。その頃のまま、私は今でもポニーテールにしている。
スカートの短い生徒に注意をすると…。

「忘れないでね」
転校ばかりしてきた美奈は、『いずれ転校する』ことが分かっているからこそ、学校では『クラスの外れ者』と仲良くし、自分に向けられる絶対的な信頼みたいなものに陶酔する。そんなことをずっと繰り返してきた。
仙台に父親が家を買ったので、もう転校はない。それなのに私はまた、髪がオレンジの、クラスの外れ者の真琴と仲良くしている。私は今回、真琴からどうやって逃げきるつもりなのだろう…

「ながれるひめ」
藍は、潰しが利くだろう、という程度の理由で教職を取り、後悔しつつもあれよというまに教育実習がやってきた。姉が美術の先生として働いている、自分の母校に連絡を取り、教育実習に行くことに。
姉とはある時を境に折り合いが悪くなっていった。今でもそれは、さほど変わらない。きっと、私が失敗すればいいとか思ってるんだろう…。

「いちごとくま」
磯山は、いちごとかくまみたいなもふもふしたものが昔から似合っていたし好きだったのだけど、周りからはよく「ぶってるよ」と言われてきた。女子高ならなおさらだろう。
そんな磯山に、卑屈さを一切見せずに近寄ってきて仲良くなった女子がいた。くまっちと呼ばれている熊野実枝は、誰とでも仲良くする、ものすごい明るさを持った女の子だった…

「やさしい人」
落川は、高校の同級生だった浅野に押し付けられて、同窓会の幹事をすることになった。そうやって思い出したのが、クラスメイトだった木田芙見のこと。
仲が良いわけではなかった。でも、気になってはいた。同窓会の返事の期日までには連絡がなかったのだけど、その後連絡があり…

「ゆうちゃんはレズ」
後輩の新木結生はレズだという噂がある。真面目にやっている生徒を貶める馬鹿馬鹿しい噂だと思って、それを聞いてから榊明子は結生と仲良くするようになった。
そのせいなのかなんなのか、私は結生に告白されている。好きです、出来れば付き合ってください、と…。

というような話です。
僕がこれまで読んできた豊島ミホの作品と比べると、多少弱いかなという感じはあるけど、これもなかなかよかったです。
正直、初めの二編はあんまりという感じで、これはダメかなぁ、と思ったんですね。でも、三編目の「忘れないでね」からかなり面白くなってきて、それ以降は全部よかったです。
僕は、女子高という特殊さみたいなものはよく知らないんだけど、本書では、『わざとらしく女子高らしさを描く』なんていうことをしていないのがいいな、と思いました。基本的にどの話も、女子高じゃないと成立しない、というわけではないんですね。共学が舞台でもたぶん成り立つ。でも、物語の片隅に、なんとなく女子高の気配を漂わせる、という感じなんですね。この辺のバランスがうまいな、と思いました。もし、全面に女子高っぽさが押し出されている作品だったら、男の僕にはちょっと遠さを感じさせる作品になっていたかもしれないけど、それが全然なかったので、すっと入っていけました。
豊島ミホはやっぱり、ごく普通の人を描き出すのがうまいな、と思いました。誰しもが、そういう部分持ってるよなぁ、と感じるようなところをうまく抜き出してくる。自分の内側にあっても、明確に言葉にして来なかったような感情みたいなものを、ずばっと描かれてしまう。そういうところが、相変わらず冴えているなという感じがしました。
特に、これも誰でもそういうところあると思うんだけど、表向きの自分と、内心の自分みたいなもののバランス、他者との関わり方の表裏みたいなものが本当に巧く描けていて、凄いなと感じますね。高校生ぐらいの時って、やっぱ大体の人はこんな感じだったよなぁ、って改めて思います。逆に言えば、学生時代とかに外面と内面にズレのなかった人には、豊島ミホの作品はあんまりよく分からなかったりするのかもしれません。
僕は個人的には、一番最後の書き下ろしの作品「ゆうちゃんはレズ」が一番好きだなと思いました。なんというか、最後の方で結生が榊に対して言うセリフが、自分にもグサリと刺さるようでした。いや、別に僕は同性が好きとかそんなんじゃないんですけど、榊の結生に対する態度は凄く理解できてしまう。僕も榊と同じような立場になったら、同じようなことをしてしまうだろうなぁ、と思うんですね。この最後の話はある意味では女子高ならではなのかもだけど(共学でもあるだろうけど)、一番これが好きだなと思いました。
「檸檬のころ」や「神田川デイズ」なんかと比べればインパクトはちょっと弱い気もするんだけど、やっぱり豊島ミホの世界は好きだなと感じました。この若さで、これだけの作品を書けるというのは本当に凄いと思います。是非読んでみてください。

豊島ミホ「リリイの籠」




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豊島ミホ 「リリイの籠」

女子高が舞台の短編集。教え子に言われておしゃれなスカートを買ったり、髪を切ってみたりとちょっとだけど冒険をする先生。

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2013年の個人的ベストです。

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8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
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10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
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15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
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5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
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20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
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18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
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10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
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17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
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2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
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1位 千早茜「からまる
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1位 「「科学的思考」のレッスン
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)