黒夜行

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しずかな日々(椰月美智子)

内容に入ろうと思います。
主人公は小学五年生の枝田。「えだいち」と呼ばれてる。人見知りで引っ込み思案な性格のため、四年生まで友達がいたことがほとんどなく、教室の隅っこで静かにしているような少年だった。ずっと母子家庭で育ったという負い目もあったかもしれない。五年生になった時も、クラス発表の張り紙を見て真っ先に目がいったのは担任の先生で、誰が同じクラスなのかということには全然関心が持てなかった。
そんなえだいちに、初日から声を掛けてきたのが押野だ。押野は誰からも好かれるリーダー的な存在で、出席番号順だった席が押野と近かったお陰で、えだいちは押野と、そしてすぐにクラスメートともうまくやっていけるようになった。
そうなると、なんだか世界ががらっと変わったみたいだった。今まで自分がどうやって時間を潰していたのかも思い出せなくなるくらい、毎日が楽しくなった。押野とは本当に気があって、いつでも一緒にいるような感じだった。
そんなある日、家の近くに女の人の姿があった。どうやら母親の知り合いらしいのだけど、どうもおかしい。母親のことを「先生」なんて呼んでるのだ。
そしてえだいちは、驚くようなことを聞かされる。なんと母親は仕事を辞め、その女の人と新しい仕事を始めるというのだ。だから引っ越さなくてはいけない、転校しなくてはいけないと言われるのだけど、絶対に転校したくなかったえだいちは…。
というような話です。
これは、ちょっと前に文庫化された作品なんですけど、僕はこの作品、結構期待してたんです。読む前から、これは来年力入れて売ろうかなぁ、と思ってたんですね。
そんなわけで、ちょっと期待しすぎてた部分はあるのかもしれないんですけど、思ってたほどではなかったなぁ、という感じがしました。勝手に期待しといてハードル上げて、それであんまりだったというのはちょっと酷いかもだけど、それが正直な感想です。でも、決して悪いわけじゃないんですよ。でも、読む前から、これぐらいの傑作かなぁ、と思ってたところまでは行かなかったなぁ、という感じなんです。
基本的には、夏休みにおじいさんの家で過ごす少年の話なんです。冒頭の方であーだこーだといろいろあって、夏休み前におじいさんの家に移ることになった少年のひと夏の思い出、という感じでしょうか。
だいたい、主人公が押野と遊んでるか、主人公がおじいさんと関わってるか、あるいはそれらが混ざってるか、という感じになります。あとちらほら、押野以外の友達も出てきたり、母親との話がちょっと出てきたりします。
押野と主人公のやり取りは、少年っぽくていい感じです。アホなことに大騒ぎしちゃうところとか、唐突に出てくる会話とか、男の子だなぁっていう感じで微笑ましいです。
あとおじいさんがなかなかいい味出してます。基本無口で、喋っても一言二言ぐらいなんだけど、その朴訥とした感じがいい。子供を子供扱いしていない感じが伝わってきて、対応がおざなりじゃない。子供を子供扱いして適当に対応する大人が結構多いイメージがあるんだけど、このおじいさんはそうじゃないから、すぐに親しくなれる相手じゃないけど、長く一緒にいると凄く安心出来る相手になるだろうなぁ、と思ったりします。
個人的に不満だったのは、主人公の母親に関して。いろいろあって主人公は母親と離れて暮らすことになったんだけど、この母親のことがイマイチわからない。もちろん、小学生の男の子視点で物語が進んでいくので、小学生の男の子視点からすれば母親の状況が分からないというのは当然でいいんだろうけど、それをどうにかしてもう少し物語に組み込めなかったかなぁ、という感じがしました。母親がどういう方向に進んでしまったのか、という明確な描写を組み込むのが難しかったとしても、もう少し主人公から見た母親の描写がある方が、主人公が母親に対して抱く違和感みたいなものにもう少し説明がつけられるような気がします。そこがもう少し描写されてるとよかったんだけどな、と感じました。
まあそんなわけで、それなりに良い作品です。正直、期待してたほどではなかったんですけど、少年たちのキラキラ光るような毎日を読んでいくのは結構楽しいですね。読んでみてください。

椰月美智子「しずかな日々」




関連記事

Comment

[4005]

出ちゃったの?出しちゃったの!?
http://www.push29.com/

[4006]

こんばんは。
椰月さんのこの本が文庫になったのですか。
最近、本屋さんに行っていませんので、気がつきませんでした。
私が初めて読んだ椰月作品はこの本でしたので、私的には大絶讃でしたが、読みが深い通りすがりさんとしましては、ちょっと期待はずれだったようですね。私はオバサン的にこのような内向的で一人ポツンといるような少年を応援したい気持ちが強いので、少しずつ自信を持って成長していくような話が好きです(笑)。
その後、『十二歳』『体育座りで空を見上げて』『未来の息子』『坂道の向こうにある海』『ダリアの笑顔』と読んでみましたが、この作品が彼女のBESTでは?と思います。新作の『ダリアの笑顔』が少しこの『しずか~』に似ていますが。
今月下旬に角川書店から本多さんの新作が出るそうですが、ネットで検索しても見つかりません。タイトルは『at Home』というらしいですが、真偽の程も分かりません(泣)。もし、何かお分かりでしたら、教えて下さいね。お願いします。

[4007]

こんばんわです。
文庫になったのは、4ヶ月ぐらい前かなぁ、確か。
僕は、決して読みが深い人間ではなくて、むしろ浅すぎて残念なんですけど(もう少し小説を深く読める人間になりたいものです)、
たぶんこの作品がほどほどだったのは、事前の期待が大きすぎたからだと思うんです。
なんでかわかんないんだけど、読む前から、これは間違いなく傑作だ!と思ってしまったんですよねぇ。たぶんそれが失敗だったんだろうなと思います。僕も、この主人公、好きですよ。似てるなーって部分もありますし。
ドラさんが、椰月美智子さんの作品で本書がベストだというなら、他の作品は手を出さなくてもいいかな(笑)。悪くないけど、あと一歩突き抜けてくれたら、という感じの作家さんのような気がします。
本多さんの新刊は…、すいません、単行本の情報はあんまりちゃんと追いかけてないんで分からないんです。でも確かに、ネットで調べると、ざっくりした情報は出てきますね。細かいことは分かりませんけど。
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1102980589

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しずかな日々@文庫

主人公が小学5年生のときの夏休みを回想録で語る作品。何気ない日常の、大切でかけがえのない一瞬を淡々と語り、人生のターニングポイントになった少年の日々を静かに描いてます ...

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)