黒夜行

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人はなぜエセ科学に騙されるのか(カール・セーガン)

地元の人の中にも、アカネちゃんを気に入っている人がいて、今日はお休みかい、と聞かれることがあったのだけど、ぎりぎりまで自分たちで探すというカナちゃんの言葉を思い出して、曖昧に答えを返しておいた。
 家に帰る途中で、カナちゃんからメールが来た。結局アカネちゃんは見つからなかったから、警察に届け、ご両親にも連絡を取ってもらった。ご両親には、最後にアカネに会ったのがシホだということは伝えておいたから、もしかしたら連絡が来るかもしれない、という内容だった。カナちゃんありがとう、と返信しようと思ったのだけれど、志保がありがとうと言うのも何だかおかしな気がして、お疲れさまと返信した。まだ寝るのには早い時間だったけれど、これからしなくてはならないことを思うと、眠っておいた方がいいと志保は思った。疲れていたこともあって、志保は着替える間もなく眠りに落ちた。

「失踪シャベル 17-8」

内容に入ろうと思います。
本書は、物理学者でありSF作家でもあるカール・セーガンが、晩年に書き遺した作品です。タイトルの通り、UFOを初めとしたエセ科学に何故人々は騙されてしまうのか、そして科学的な思考がどれだけ重要なのか、ということを説いた作品です。
セーガンの立ち位置は明確です。それは、『科学は確かに完全ではないが、しかし人類が獲得した最も素晴らしい体系の一つだ。そしてエセ科学にも真実はあるかもしれないが(そのすべてを否定するわけではないが)、少なくとも反証不可能なものには意味が無い』という感じです。
まず、科学の体系も決して完全ではない、ということを書きます。しかし科学は、完全ではないということをその体系の内側に組み込んでいます。科学的な体系として最も重要な点は二つ。一つは『反証可能であること(実験によって確かめられるということ)』、そしてもう一つは『どれだけ認められ、権威のある理論であっても、疑いの目を常に向け続けること』です。つまり科学は、自身が不完全であることはきちんとわかっていて、それを補強するような仕組みにきちんとなっているわけです。セーガンはまずこの辺りのことを強調します。
それから、主にUFOを扱って、いかに人々がエセ科学に騙されてしまうのか、ということを具体的に描いていきます。
セーガンは、本当に宇宙人がUFOに乗って地球にやってきているのであれば、諸手をあげて歓迎するし、いくらでも研究をしよう、という風に考えています。しかし、現在得られている事実はほとんど、科学的な視点で見たときにあまりにも綻びのあるものばかりです。UFOを見たという目撃情報は、そのほとんどが他の説明のつけられるものだし、ミステリーサークルは人為的なものだと告白された。宇宙人による誘拐についても、それが実際に起こったとされる明確な証拠は今のところない。
それにも関わらず、多くのアメリカ人が、UFOに乗って宇宙人が地球にやってきていて、さらに宇宙人が地球人を誘拐していると信じているわけです。
科学的な視点で見れば明らかにおかしな主張がまかり通ってしまう。人々はとにかく、「自分が信じたいものを信じる」わけです。
しかも、そもそも科学にはよからぬ偏見があるとセーガンは指摘します。科学的な手法によってではわからないことがあるはずだし、検証できないからと言って真実ではないと切り捨てるのはおかしい。科学には、直感に反するようなよく分からない理論がたくさんあるし、何よりも数学が分からないと理解出来ないのだからダメだ、と。そういう科学に対するマイナスイメージも、多くの人がエセ科学を信じるようになってしまうベースになっているのではないか、と書いています。
他にも、アメリカにおける科学教育をどうしたらちゃんと出来るのか、宗教と科学はどんな歴史を辿ってきたのかなど、いろんな話題に話が向かいながら、いかに科学的なものの見方が大事なのか、ということを説いている作品です。
なかなか面白い作品でした。僕にはどうしてか、「カール・セーガン」=「うさんくさい科学者」というイメージがあったのですけど(たぶん誰かと間違えてるんだろうなと思いますけど)、本書を読んでそのイメージが払拭されたのでよかったです。科学寄りに立ちすぎるのでもなく、エセ科学を必要以上に非難するでもなく、可能な限り中立に近い立ち位置から、科学の大事さについて説いている作品で、なかなか面白いなと思いました。
特に、人々が(本書ではそのほとんどがアメリカの例ですが)いかにエセ科学に騙されてしまい、その結果どんな主張をするようになっているのかという辺りの話は実に面白いですね。
何せアメリカという国は、進化論について学校で教えなかったりするんですね。これはまあ知識としては知ってましたけど、驚きますよね。要するに、聖書の記述に反するから、ということらしいんですけど、生物学にはほとんど知識のない僕でも(あるいはそんな僕だからこそ?)、進化論がいかに筋の通った理論なのかということは分かっているつもりです。しかしそれを、聖書の記述に合わないから、という理由で教えない。何故なら、聖書は「無謬」だからです。
もちろん、信仰を否定するつもりは僕には特にはないですし、セーガンにもないと思います。でも、聖書は無謬だからという根拠も何もないただの願望だけを根拠に(なんて書くと怒られるかな?)、進化論という科学的に認められている理論を排除するというのは、僕にはちょっと正気の沙汰とは思えないですね。
UFOの話も面白かったです。セーガンは天文学辺りが専門だったりするんで、UFOなんかの話もよく聞くらしいんだけど、それらあらゆる意見について、冷静に理論的に反論していくんですね。僕からすれば、まあ当然のことを言ってるなという感じで、その当然なことを信じていない人がたくさんいるということがもう驚きなわけなんですけど。
UFO以外にも、占いやらセラピーやら予言やら、そういう胡散臭いものについても、科学的に考えてこういうところがおかしいという話を繰り広げていきます。ここでもやっぱり僕は、占いやらセラピーやらを心の底から信じられる人がいるということが驚きなわけなんですけど。
しかしそう考えてみると、本書は確かに面白いんだけど、しかし本書を読んで「これは素晴らしい本だ!」と感じる人がどれだけいるかというとちょっと疑問ですね。というのも、僕のようにUFOやら占いやらをまるで信じていない人間からすれば、セーガンの言っていることは当たり前過ぎて、時々、なるほどそういう見方もあるのかという新鮮さはありますけど、それほどびっくりするような意見には出会わないわけです。じゃあ一方でUFOや占いなんかを信じている人が本書を読むとどうかというと、なるほどセーガンの言う通りだ!なんてことにはやっぱりならないと思うんです。いろんな理屈をつけて、セーガンの言ってることはおかしい、と非難することになるでしょう。というわけで、本書を読んで「これは素晴らしい本だ!」と感じる層というのは、正直あまりいないのかもしれません。
上巻の巻末には、ビジネスなんかでも有用そうな「トンデモ話検出キット」というリストがある。これは、怪しげな議論を見抜く参考になるようなリストなんだけど、なるほどと思わされることが多くて、トンデモ話だけではなくて、ビジネスや交渉なんかの場でも結構使えるのではないかなと思いました。
ちょっと長いのが玉に瑕という感じはありますが、面白いアプローチの科学本だと思います。ものの見方が固定されてしまっている大人はもちろん、長いという点を除けば子供が読んでもすごくためになるほんではないかなと思いました。自分が正しいと信じていることが本当に正しいのか、ということを考え直させる作品だと思います。是非読んでみてください。

カール・セーガン「人はなぜエセ科学に騙されるのか」







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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
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5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)