黒夜行

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監査難民(種村大基)

「結構自分で頑張ってノート取ってたつもりだけどさ、やっぱ限界あるのな。何を書いたらいいかわかんないし、やっぱりうまくまとまらないからさ、ベルのノート貸して欲しいんだよ」
 そう言われて志保は思いついたことがあった。交換条件を出すみたいで嫌だったけれど、これまでもずっとノートを貸してきてるんだし、これぐらいの頼みだったら聞いてくれるんじゃないかと思ったのだ。
「今日ね、お母さんの再婚相手だったっていう人が家に来るんだけれど」
 突然話が変わったことに、カナちゃんもアカネちゃんも驚いたみたいだったけれど、何も言わなかった。
「アカネちゃん、今日家に来てくれたりしないかな?叔父さんも一緒に来てくれるみたいだけれど、一人じゃ不安で。再婚相手だった人に会わせるつもりはないからさ、部屋のどこかにいてくれればいいんだけれど」
 アカネちゃんはカナちゃんの方をちらっと見て、すぐ志保に向き直った。

「失踪シャベル 15-3」

内容に入ろうと思います。
本書は、中央青山監査法人(解散時はみすず監査法人)がいかに解散に追い込まれ、また日本の『監査』に対する目がどのように厳しくなっていったのかを追ったノンフィクションです。
これから内容をざっと紹介するつもりではありますが、僕は経済やら会計やらということにはまるで疎いので、単語やら事実関係やらの記述に間違いがあるかもです。もしあったら指摘してくださいまし。
日本はかつて、企業における監査をあまり重視していなかった。法律上仕方ないからやる、という程度の認識だった。それは、融資の大半を銀行から借り受けており、その銀行も大蔵省をトップとする護送船団方式によってがっちりと守られていたという特殊な上京だったからこそ成立しえたのだ。
しかし、大蔵省がなくなり、護送船団方式が潰え、企業が個人投資家から金を集める仕組みに変化していくと、自ずと監査の重要性が叫ばれるようになった。しかしその一方で監査業界は、それまでの馴れ合い的な慣習を払拭することが出来ず、旧態依然的な監査の仕組みのままであった。
そんな時に起こったのが、カネボウの粉飾決算の問題だ。監査法人というのは、いくつもの独立性の高い会計士たちによる寄合集団という性格が強く、長きにわたりカネボウを担当していたのは、中央青山内でも評判の良い代表社員が中心のグループだった。なので中央青山のトップは当初、会計士はカネボウの経営者に騙されたのだ、と信じていた。しかし次第に、会計士が共犯的な立場としてカネボウの粉飾決算に携わっていたことが明らかになり、中央青山は激震に見舞われる。
それ以前にも、足利銀行や日興などの会計処理を巡ってマスコミに叩かれてきた中央青山監査法人は、トップを新たに替え、根本的な改革へと乗り出していくことになる。しかし、社会を取り巻く状況は厳しくなる一方だった。立て直しを掛けて奮闘する中央青山に対し、厳しい状況が噴出していく…。
という感じです。
カネボウの粉飾事件についてはなんとなく記憶にあります。中央青山、という名前も耳にしたことがあります。でも、あのカネボウの事件の裏側で、こんなことが行われていたんだなぁと初めて知りました。もともと経済的な知識には疎いので、僕の中では、まあ知らなくても仕方ないかという感じの話題ではあるのですけど、読んでいると、難しい部分は多々あるものの、中央青山が解体されていく過程は一つの物語としてなかなか面白いと思いました。
ただ本書は、そういう経緯を追っただけのノンフィクション、というわけでもありません。「監査難民」というタイトル通り、中央青山監査法人が解散したことをきっかけに、監査難民が増えるのではないか、と危惧しているわけです。本書は2007年の作品なので、現状ではまたいろいろと変わっているんでしょう。結局どうなってるんだろう、今。
監査難民というのは、監査を引き受けてくれる監査法人を見つけられない企業のことを指します。企業は、監査を受け、有価証券報告書を金融庁に提出する義務があります(この説明で合ってますよね?)。しかし、監査を引き受けてくれるところがなければ、この有価証券報告書を提出できないことになり、最終的には上場廃止に追い込まれてしまうことになります。
中央青山が解体したことにより、それまで中央青山に監査をしてもらっていた企業は、別の監査先を見つけなくてはならなくなりました。それによって発生した監査難民もあるわけですが、それ以上に厳しくなったのが、監査の厳密化によって、怪しい企業への監査を監査法人が引き受けたがらなくなってきた、ということです。
結局はそういう議論は逃れたものの、一時は、不正を行った会計士に刑事罰も、という話もあったようです。また、現に中央青山というこれまで四大監査法人の一角を成していた監査法人が解体するのを見て、監査法人は慎重を喫するようになってきています。そもそも粉飾決算は企業が悪いのに、最終的にそれを見抜けなかった会計士まで批判されるという現状に苦言を呈する意見もあるようですが(実際相当の会計の知識を持っていても、企業側が組織ぐるみで隠蔽工作をすれば、容易には見抜けないんだそうです)、カネボウの粉飾決算の事件以来高まってしまった監査の厳格化の流れは止めようもなく、監査法人側も、自衛手段の一つとして怪しい企業の監査はそもそも引き受けない、という流れが出来つつあるんだそうです。
実際そういう中で、監査難民が発生したのかどうか、僕は普段なかなか経済ニュースをちゃんと見てるわけではないんで覚えていませんけど、でもきっとあるんでしょうね。あと、上場していない会社は監査を受けなくていいのかなぁ、とちょっと思ったりしました。
しかし、内容は結構面白いんですけど、やっぱり経済的な話はすごく難しい。例えばJALの会計の話が冒頭にあって、そこで『繰り延べ税金資産』という単語が出てくるのだけど、これの説明が僕にはまるで理解出来ない。
『繰り延べ税金資産とは、ゆくゆくは発生すると見込まれる課税所得に対する税金を前払いしたとみなすことで、将来の減税額を「資産」として計上する会計上の処理を指す。』
うーん、全然理解できません。本書の中には、ところどころこういう会計処理上の話が出てきて、しかも僕には理解できなかったりする。それが理解できなかったからと言って作品全体が理解出来ないということもないんだけど、やっぱり僕には経済的な話は無理だなと実感した次第。難しすぎます。
まあそんなわけで、強くオススメするほどでもないけど、自分がまったく知らない世界の話で面白かったです。ライブドアやカネボウなど、ニュースを騒がせた話題もいろいろと出てくるので面白いんじゃないかな、と思います。

種村大基「監査難民」




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2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
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新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
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新書
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2位 「武器としての決断思考
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5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)