黒夜行

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コロヨシ!!(三崎亜記)

10

「生一丁入りましたー」
 志保は、誰にというわけでもなく大きな声でそう言った。ありがとうございまーす、というスタッフの声が店内に響く。バイトを始めた当初は、受けた注)をキッチンに届くような声で復唱するというのが恥ずかしくて、あまり大きな声を出すことは出来なかった。今ではもう慣れたもので、奥の座敷にいても志保の声が聞こえた、なんて言われたこともあった。
 居酒屋でバイトを始めたのは去年の夏休みからだった。初めの内は、夏休みや春休みのような長い休みの時だけバイトをしようと思っていた。普段は勉其が忙しいし、家事もこなさなくてはならないことを考えると、長期休暇以外でバイトをするのは難しいと思っていた。それでも、夏休みの間の志保の仕事を気に入ってくれた店長は、週に一回ぐらい入ってくれれば、そのまま在籍してくれて構わないから、と言ってくれた。長期休暇の$に新しくバイトを探すのは正直厳しいと思っていたし、週に一回#$ならどうにかやりくり出来るだろうと思って、それ以来ずっと同じところで働いている。

「失踪シャベル 10-1」

内容に入ろうと思います。
本書の舞台は、僕らの生きている日本とはちょっと違う「日本」。そこでは、「掃除」と呼ばれるスポーツが存在している。
日本は40年ほどまで戦争に破れ、戦勝国によってあらゆる面で管理された。その際日本は「国技」を失い、その一方で「掃除」は国家の管理の元で行われる特殊なスポーツという地位を与えられてしまうことになる。
「掃除」とは、いくつか競技に種-はあるが、長物と呼ばれる棒で塵芥と呼ばれる羽根のついたもの(バドミントンの羽根のようなものだと思う)を操る競技だ。乱雑した会他をいかに元通りにするかというチーム戦や、塵芥を華麗に操る技を競う個人競技などがある。
主人公の藤!樹は高校二年生で、「掃除(」に所属している。幼い頃から「掃除」と関わっていて、州大会で準優勝した実力もあるのだが、(活動としての「掃除」にはさほど多が入らなかったり、「掃除」にまつわるいろいろな歴史にさほど興味がなかったりと、「掃除」との関わりについては自分の中でいろいろと模索している最中だった。何よりも、「掃除」を激しく忌避しているらしい両親に隠れて「掃除」を続けているという点が気苦労の絶えない点だった。
国家の管理局からの監視のせいで新入(員が集まりにくかったり、メジャーなスポーツではないが故に活動費に制限があったり、「掃除」に関して言えば直轄高と呼ばれる政府直轄の高校が優遇されているなどさまざまに難点はあるのだけど、それでも樹たち「掃除(」の面々は日々技術の向上と試合での成績にために、練習や活動費の確保などあれこれと努力している。
樹は、どのように「掃除」と関わっていけばいいのかひたすらに悩み続けながら練習や試合を続ける内に、より大きな流れの中に組み込まれていくようで…。
というような話です。
いやー、これはなかなか面白い作品でした!三崎亜記の作品は、「となり町戦争」と「バスジャック」以外あんまりいい印象がなくて、最近では新刊が出てもあんまり興味は湧かなかったんですけど、この作品は何だかこれまでの方向とちょっと違う感じの作品のような感じがしたので読んでみました。
一言で言えば、異端スポーツ春小説、というところでしょうか。
本書には、スポーツ春小説的な(分が多分にあります。三崎亜記の描く世界観というのは、作品によっても差はありますけど、なかなか入りにくかったりするものもあると思います。でも本書は、ベースにスポーツ春小説の要素が組み込まれているんで、他の作品よりはすんなりと三崎亜記ワールドに入り込めるのではないかなと思います。「掃除」という、何が何だか分からないスポーツを扱っているわけなんですけど、そこで悩み努力し切磋琢*し挫折し奮起していく若者の姿はまさにスポーツ春小説であり、本書の読みやすさの一端を担っているのだと思います。
一方で「異端」と書いたのは、まさにその「掃除」というスポーツそのものの設定にあります。まさに一級世界構築士と評されるだけのことはあります。正直なところ「掃除」というスポーツがどんなスポーツなのかうまくイメージ出来ない(分もありましたが(そういう意味では本書はちょっと映像で見てみたい気もする。「掃除」の(分は全(CGにするしかないから厳しいかもだけど)、設定の緻+さには驚かされるばかりです。使われる用語やルールは当然のこと、そこで用いられる戦略や技術、多体感続やスランプの要因など、とにかくありとあらゆる面をきっちりと作り上げているんですね。例えば僕はセパタクローっていうスポーツについてはほぼ何も"りませんが、それでもそれをやっている選手に話を聞けば、上記のようなことを"ることはできるし、それを使って小説を書くことも出来るかもしれません。でも、「掃除」というのは三崎亜記が勝手に作り上げた架空のスポーツなわけです。その架空のスポーツについて、ここまで綿+に細かくいろいろと考えられるものなんだなと感心しました。
また、本書の謎めいた(分の一つに、「掃除」の歴史というものがあります。「掃除」は何故か国家によって管理されるスポーツにされているんだけど(そんなスポーツは「掃除」しかない)、それが何故なのか誰も"らない。「掃除」の歴史についての)献や情報も隠されているし、インターネットで「掃除」を検索すると管理者によってマークされてしまうと言われるほどです。何故「掃除」はそんな扱いを受けているのか。うまく設定を作り上げるよなぁと思います。
また「掃除」についてだけではなくて、樹たちが住んでいる「日本」という国についてもなかなか面白く描かれています。SF的な設定と言える(分もあるけど、なんか三崎亜記の小説の他合SFという感じがしないんですね。音楽に合わせて「掃除」を舞うPURE/TRADという社交他みたいな他所があったり、管理社会のようで「掃除(」を監視する管理官がよく顔を見せたり、あるいは居留地と呼ばれる西域の地域の伝統や)化など、とにかくあらゆる(分において独特の設定が作られていて、それがストーリーに活かされています。こういう、非日常的な世界を日常感続に組み込んだ作品というのが三崎亜記の真骨頂だというのは十分理解しているつもりだけど、それにしてもこれだけ非日常と日常を融合させられるのは凄いなと思います。SF作品の他合、日常感続からは遊離している作品が多いと思うんだけど、三崎亜記の他合、日常的な感続は残しつつそこに非日常を組み込んでいるという感じで、なかなかこういうことの出来る作家はいないなという感じがしました。
登他人物も個性的な面々が揃っていて、正直三崎亜記にこういうキャラクター造形が出来るんだと新たな一面を見た感じがしました。僕がこれまで読んできた三崎亜記の作品に出てくる登他人物は、みんなクールで落ち着いていて、感情の変化があんまり表に出ない、というような印象があったんですけど、本書では愉快なキャラクターがたくさん出てきます。特にいいなと思うのは、「掃除(」の顧問である寺西先生と、樹の幼馴染で超大金持ちのお嬢様である梨奈と、樹の周辺によく出没する謎の一年生高倉偲ですね。特に寺西先生は凄いです。どう凄いのかは是非読んで欲しいけど、とにかく凄いです。あと、梨奈みたいな幼馴染がいたら厄介だろうなと思ったりします。高倉偲はクールビューティーという感じでかっこいいです。
この三人は特に魅力的に描かれているキャラクターで面白いですね。他にも、いつも意味不明な西域の格言を口にする訪先輩とか、「召喚(」という謎の(活を一人でやっている大介など変わったキャラクターが結構出てきて面白いと思います。もう一$書きますけど、三崎亜記もこういうキャラクター小説みたいな小説を書けるんだなと、新たな一面を見た感じです。
「掃除」というスポーツについてはなかなかイメージしにくい(分があるかもしれないけど、作品の設定も物語の展開も出てくる登他人物もどれも面白いですね。これまで僕が読んできた三崎亜記の作品とはちょっと違ったタイプの作品で、それまで三崎亜記を苦手としていた人にももしかしたら楽しんでもらえる作品かもしれない、と思ったりします。スポーツ春小説として読んでもいいし、SFファンタジーとして読んでもいいと思います。一級世界構築士の実力をいかんなく発揮した作品だと思います。是非読んでみてください。

三崎亜記「コロヨシ!!」





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Comment

[3895]

こんばんは。また冬に舞い戻りですね(泣)。関東地方も雪が降るかも…とテレビでは言っていますが、本当にこんな時期に雪が降ったら事件ですよね(笑)。
私も先週の休日に、この『コロヨシ!』を読みましたよ。最初、『ヨロシク!』と間違えました(笑)が「頃良し」という掛け声から来ているのですね。三崎さんの作品ですので、どんな“非現実”が飛び出すか、興味津々でしたが、期待通りの作品ですね。掃除部という部活が現実にあったら、我が子を入れて掃除好きにしたいと思っても、この掃除は優雅な舞いと塵芥(?)を規定通りの位置に置く正確さを競う競技なのでしょうね。なかなか想像はつきませんが、リアリティがありますよね。
寺西先生はおもしろいキャラですね。普段とイザというときのギャップが大きい(大きすぎる)ですし、とぼけている所(昼行灯?)も好感が持てます。それから樹の両親も、謎めいていますよね。どんな仕事に就いているかも謎ですし、掃除に関する想いも微妙です。こういう設定が三崎さんらしいですが、それ以外はかなり普通っぽい(?)作品で、ちょっと意外でした! 読みやすいといえば、そうですね。
三崎さんは連作短篇集が多かったので、今回はちょっとした“長編”でしたね。
では、この辺で。防寒対策をしっかりされて、この時期に風邪などひかないようにご注意くださいね。

[3896]

おはようございます。昨日は真冬並みの天気だったようですね…。関東でも雪ですか。寒いのはかんべんして欲しいのと、あととにかく雨は止めて欲しいですね。せっかく「1Q84」の発売日なのに。
「コロヨシ!!」は面白かったですよね。「掃除」がここまで監視されているスポーツでなかったら、ちょっとやってみたいなとは思いました。でもたぶん出来ないでしょうね。どうみても、常人に出来る動きからはかけ離れている感じがします。誰か映像にして見せて欲しいなと思います。僕の拙い想像力ではなかなかイメージしきれません。
寺西先生は凄かったですね。能ある鷹は…という感じなんでしょうし、最後の最後には何故おちゃらけていたのかという理由も明かされていたけど、なるほどなという感じでした。昼行灯というと、田口ですか?(笑)
三崎亜記の作品にしてはホント読みやすい作品でしたよね。他の作品に比べればすんなりその世界観に入れるなという感じがします。こういう系統のエンタメをもう少し読んでみたい気もします。
ではでは。ドラさんもお仕事が忙しいようですけど、気温の変化にやられないように気をつけてくださいね!

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
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2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
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小説以外
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)