黒夜行

左脇のプロフィールにある「サイト全体の索引」から読みたい記事を探して下さい。

くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しを(伊沢正名)

ここ数か月ぐらいだけど、もう目に見えてお客さんの数が減っていてちょっと驚きます。売上自体は、来店客数の減少に比例することなく、ちょっと落ちたなぁぐらいの感じなんですけど、来店客数の減少がとにかく半端ない。僕の感覚で言うと、一時の半分ぐらいになっているんじゃないかなと思います。
とにかく、店内にお客さんが全然いないんですね。ウチの店は両側を道路に挟まれている立地で、出入口が二か所あります。片側の道路から入ってもう片側の道路に抜ける、というお客さんが、かつてはかなりいたんですね。そういうお客さんは、ただ店内を通り抜けるだけで特に何も買わないんですけど、それでも店内が活気づいているという雰囲気を持たせるのに一役買っていたと思うんです。
でも、何がどうなったのか、最近そういう取り抜けをしていくお客さんの数さえ激減しているんですね。そもそも、本を買うかどうかは別として、店に来てくれるお客さんの数がびっくりするぐらい少なくなりました。雑誌とか小説とかを立ち読みしているような人もホントに少なくなりました。
通り抜けをするお客さんさえ少なくなったということは、何か外的な変化があったのだろうかと思うんだけど、特別思い浮かぶようなことはないんです。確かに今周辺で開発が進んでいるんですけど、何か道順に変化があったとか、近くに他の本屋が出来たとか、そんなことは特にないんですね。通りぬけのお客さんの存在さえ考えなければ、品揃えや接客など店自体の責任に出来るんだけど、通りぬけのお客さんさえ少なくなっているとなると、何か別の原因を考えたくなります。
しかしまあいずれにしてもこれまでは黙っててもお客さんはやってきてくれたけど、これからはそうはいかないぞ、という状況になってしまいました。本当にウチの店はこれまで、黙っていても品揃えが酷くてもお客さんが来てくれるという、本当に立地だけでなんとか成り立っていたような店だと思うんだけど、それが通用しなくなってきているんでかなり厳しいでしょうね。売上的には少しずつ落ちている、という感じですけど、恐らくこれからどんどん下がっていくことでしょう。
黙っていてもお客さんが来てくれる本屋ではなくなった、という事実を、社員がどれだけ認識しているのか。まあ認識してないだろうなぁ。
文庫と新書は、とにかく来店客数が増えてくれないともうどうにもならないんで、かなり硬直状態です。文庫と新書の売場をどうにかすることで来店客数を増やすというのはなかなか現実的ではないですしね。まあかなり厳しいです。なんとか踏ん張ろうとは思っていますけど。
そろそろ内容に入ろうと思います。
本書はまあ、とにかく奇書と言っていい作品でしょう。ひたすら野糞をし続けるオッサン(本人は糞土師を名乗っている)の話です。
ことは高校時代にまで遡ります。大人の世界に幻滅した著者は、なんと仙人になりたいと言って高校を中退してしまいます。しかしそれで生きていけるわけもありません。著者は自然保護のボランティア活動みたいなものを組織しながら、一方できのこを始めとする菌類の写真を撮るというような生活を始めます。
著者が野糞をするきっかけになったのが、住んでいる町の近くで起こった「屎尿処理場建設反対運動」だったんだそうです。自分の排泄物が自然保護という観点からみたらおかしいことに気づいた著者は、だったらトイレを使わないで野糞をしてやる、と決意。それからほとんどトイレを使わないで野糞をするという生活になるわけです。
そんな中で気づいた、糞と菌類との共生。キノコの写真家として本格的に活動し始めた著者は、一方で野糞の記録もつけるようになり、しまいには野糞の良さを広めるまでになっていくのだが…。
というような作品です。
とにかく、全編野糞とキノコの話がメインです。ウンコについての本というのはそれなりにあるかもしれないけど、野糞に関しての本というのはまあないでしょう。この著者申請さえすれば、「下水道が完備されている国での野糞世界一」みたいなギネス記録もらえるんじゃないかなぁ。
著者は茨城に住んでいるらしいんですけど、仕事の関係で都内やあるいは海外に行くこともあります。その時でさえ、どうやったら野糞が出来るのかというのを真剣に考えて実行するんですね。もちろん、都内で仕事という時はなかなか野糞が出来ないわけなんだけど、野糞歴が長くなっていくに連れてその問題もどんどん解決していったようです。現在では、年に二三回トイレを使うだけで、後はほとんど野糞なんだそうです。
まあしかし、糞土師なんて言っていますけど、まともなこともちゃんとしています。写真の素人だったにも関わらず、キノコの写真を撮る人というのがほとんどいなかったということもあり、徐々にキノコの写真家として認められてくことになります。キノコに関する著書も多数あり、また仕事の繋がりで様々な著名な研究者なんかと関わりを持っているようで、そういう意味では立派なことをしている人なんですね。
まあ別に野糞が立派じゃないとは言わないんだけど、やっぱりすんなり受け入れるのは難しいですね。著者の言い分としては、人間は自然から食べ物を摂取しているだけで、排泄物は自然に返すことなく、逆に資源の無駄遣いして処理している。人間の排泄物は、他の生態系にとってはごちそうなのだから、自然に返さなくてはいけないよ、という感じのようで、まあ分からないでもないんだけど、じゃあ野糞が出来るかっていうとなかなか難しいですね。
伊沢式野糞の最も抵抗がある点というのが、最後手で肛門を洗う、という点です。まず、使い勝手のいい葉っぱ(これについてもどれがいいかということをきちんと調べて本書に載せています)でお尻を拭き、その後瓶に入れて持ち歩いている水を指につけ肛門を何度か拭く、というんですね。インドではみんなこうしているらしいんだけど、これはなかなかハードル高くないですか?
しかし、伊沢さんの周囲では野糞に啓蒙される人がいるらしく、中には女性にも関わらず野糞をするという人さえいるみたいです。凄いですね。すげぇなと思います。そういう、常識をサクッと飛び越えられる女性は好きですね。
糞土研究会みたいなものも発足したようで、会員が徐々に増えているんだそうです。いろんなところでウンコについての講演をするとバカ受けらしく、講演後もみんなでウンコの話をしているぐらいらしいです。ホント変なことやってるなぁと思います。
自分が野糞をしたウンコがどういう過程を経て土に返っていくのかというのも研究したらしく、巻末にその時の様子を写した写真が載っている袋とじがあります。僕はこの本を古本屋で買ったんですけど、その時点で袋とじは開けられていませんでした。で、僕も開けてないんですね。結構ぐっちょりとしたウンコの写真もあるみたいで、なかなか中を開く勇気が出ません。まあその内気が向いたら開けてみようと思います。
しかし、対象が何であれ、一つのことにここまで真剣に取り組むことが出来るというのはやっぱり凄いものだなと思います。高校時代大人に幻滅したことで今の道に進むきっかけになったわけですけど、やっぱりこういう特別な道に進む人というのは、社会に解け込めない人が多いんだろうなと思ったりします。僕も社会にはなかなか解け込めない人なんですけど、僕の場合はただ解け込めないだけのダメ人間なんでちょっと残念ですけど。
まあそんなわけで、オススメするほど面白い本というわけではないんですけど、奇書であることは間違いありません。変わった人の話を読みたい方はどうぞ。

追記)別に文句をつけるわけではないんだけど、amazonのコメントで「?」というものがあった。本書のタイトルが「くう・ねる・のぐそ」となっていて、野糞の話はたくさん出てくるけど、食うと寝るの話は出てこなかった、というのだ。
うーむ。なんというか、このタイトルはそういうことじゃないと思うんですけど。人間にとって、「食べること」「寝ること」「排泄すること」はとにかく大事な三つで、その大事な三つの内の一つをなんと野糞で置き換えちゃった人がいますよ、という驚きを生み出すためのタイトルだと思うんですね。だから食うと寝るの話がないのは普通だと思うんだけど…。

伊沢正名「くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しを」



関連記事
スポンサーサイト

Comment

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

http://blacknightgo.blog.fc2.com/tb.php/1589-94a43ab6

 | ホーム | 

プロフィール

通りすがり

Author:通りすがり
災害エバノ(災害時に役立ちそうな情報をまとめたサイト)

サイト全体の索引
--------------------------
著者名で記事を分けています

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行~わ行

乃木坂46関係の記事をまとめました
(「Nogizaka Journal」様に記事を掲載させていただいています)

本の感想以外の文章の索引(映画の感想もここにあります)

この本は、こんな人に読んで欲しい!!part1
この本は、こんな人に読んで欲しい!!part2

BL作品の感想をまとめました

管理人自身が選ぶ良記事リスト

アクセス数ランキングトップ50

TOEICの勉強を一切せずに、7ヶ月で485点から710点に上げた勉強法

一年間の勉強で、宅建・簿記2級を含む8つの資格に合格する勉強法

国語の授業が嫌いで仕方なかった僕が考える、「本の読み方・本屋の使い方」

2014の短歌まとめ



------------------------

本をたくさん読みます。
映画もたまに見ます。
短歌をやってた時期もあります。
資格を取りまくったこともあります。
英語を勉強してます。













下のバナーをクリックしていただけると、ブログのランキングが上がるっぽいです。気が向いた方、ご協力お願いします。
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

アフィリエイトです

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
11位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
9位
アクセスランキングを見る>>

アフィリエイトです

サイト内検索 作家名・作品名等を入れてみてくださいな

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

カウンター

2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)