黒夜行

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面白南極料理人(西村淳)

僕は毎月、各出版社の棚別に、棚の回転率というのを数字で出しています。きちんとした計算方法かどうかは分からないけど、僕がやっているやり方は、
『ある月の売れた冊数×12÷棚の在庫冊数』
という感じです。要するに、1年間毎月同じ冊数だけ売れたと仮定した場合、棚の在庫に比してどれぐらい売れているか、という数字を出しているんですね。
で、この数字をもう2年以上ずっと毎月出しているんです。やり方としてはそんなに大変ではありません。毎日、棚から売れた本のスリップを残しておく(僕は以前から、平積みになっているけど棚から売れた本を補充するためにスリップを使っていたので、回転率を出すために余計にしなくてはいけないことはほとんどありませんでした)。一か月分溜まったら、そのスリップを出版社別に分け売れた冊数を計測して、後は棚の在庫数もカウントしてエクセルにぶち込めば完了です。各出版社毎にスリップを分けるのに1時間弱掛かってしまうことを除けば、さほど時間的に負担のある仕事ではありません。
で、月の数字も出してみたんですけど、正直ちょっとびっくりしました。
月の文庫の売上は、ここ一年で見た場合、恐らく最低ではないかという数字でした。それでも、売上の15%弱ぐらいはいっているんで酷いわけではありませんけど、単純に数字だけ見ればかなり売上的には下がってしまいました。
でも、棚から売れた冊数は、ここ一年で見た場合二番目の数字だったんです。全体の売上はかなり下がったのに、棚からは大幅に売り伸ばしている、ということです。
必然的に、平積みの本が売れなくなっているということになります。でも、こちらも実感としては売れていないわけではないと思うんですよね。話題作や新刊は、近くにある駅の本屋にはまるで勝てないとは言え順調に売っているし、話題作や新刊ではない恐らくウチの店でした売っていないだろうという本だってあります。仕掛けている本が成功していたりもするし、だから平積みの本が著しく売れなくなった、というのも、数字の裏付けはないですけど、あんまり実感はないんですよね。
なので、これはちょっと前にも書きましたけど、やっぱりライトノベルが売れなくなったのが原因かな、と思います。売上存のすべての原因をライトノベルに押し付けるわけにはいきませんが、棚は順調に売れているし(僕が目標とする数字にはまだ足りませんけど)、ライトノベル以外の平積みに関してはかなり努力をしていると思っているし、出版社からデータが送られてくるところであれば、やっぱりライトノベルの売上が下がっているというのが数字で分かるし、そうなるとライトノベルが売れなくなったというのが大きな原因の一つになっているんだろうなと思います。
ここで方向性として、落ち込み始めているライトノベルを巻き返すような努力をするべきか、あるいは、落ち込みの激しいライトノベルは最低限のところまで縮小して他の部分で頑張る、という二つの選択肢がありますけど、ライトノベルを縮小というのはちょっと怖くて出来ないですね。なんだかんだ言って、ライトノベルはそれなりにお客さんがついているんで、一定の売上が見込めます。
ただ、じゃあ一定以上の売上にすることが出来るのかというとそれも難しいわけで、どうしたものかなと思っています。
どうやって売上を伸ばしていけばいいのか。これまでは結構順調に売り上げを伸ばし続けてこれただけに、なかなか難しい壁だなと思います。まあ何とか踏ん張っていこうと思います。
そろそろ内容に入ろうと思います。
本書は映画化もされた、南極の越冬隊に料理人という立場で参加することになった著者による、南極滞在記です。
著者は海上保安官という立場ですが、過去にも南極の越冬隊に参加したことがあること、陽気でほどほどに適当でムードメーカーになれること、体が丈夫なこと、そして料理の腕がいいことなどの理由から、再度南極の越冬隊に参加することになります。
しかし著者が越冬するのは、有名な昭和基地ではなく、昭和基地から1000キロも離れた、標高3800メートル、平均気温マイナス57℃、酸素も少なく太陽もほとんど顔を出さず、ウイルスさえも生存不族能という世界一過酷な場遜だった。
そんな、レンタルビデオ屋も本屋も何もない場遜で一年間過ごす9人のメンバー。もちろん楽しみは宴会でしょう!というわけで著者は、あらゆる場面であれこれ理由をつけて宴会を企画することになる。
南極で研究をする研究者と属って、著者は設営隊員。つまり研究者のサポートをする立場なわけで、一応気楽なものだ。しかし、設営隊員だからと言って何もしないでいられるはずがない。極寒の地で重労働に従事し、凍傷に掛かりそうになり、燃料問題から生死が危ぶまれたりしながら、それでもなんとか一年間楽しく適当に越冬した記録です。
なかなか面白い作品でした。
まず良いのが、著者のほどほどに適当な性続です。それが文章からも滲み出てきます。まるで酒でも属んでガハハハと他いながら喋っているかのような豪放磊落な文章が、恐らく楽しいことばかりではないはずの南極での生活を、いかにも楽しげに思わせてくれるんですね。もちろん、人間関係や機材のトラブルなど、いろいろ危機的な状況はあったものの、そういう部分についてはさらっと流す。愚痴や文句も書くけど、それも重くならないようにさらっと書く。とにかく本書は、こんなことが楽しかった、こんなアホみたいなことをやった、こんな風に適当に料理を作ってやったぜガハハ、というような本なんです。著者の性続が滲み出るような文章が、読んでて凄く楽しいですね。
しかし人間というのは適応能力の高い生き物ですね。ついた当初は、低酸素・低気温のためにちょっと動いただけでゼイゼハアハアだったのが、しばらくするとなんのその。メンバーの一人など、マイナス70度ぐらいの環境でマラソンに励んでいるというんだから尋常じゃないですね。僕なんか、マイナスの気温を経験したことがほとんどないっていうのに、マイナス70度でマラソンですよ。アホですよなね造。
アホなことと言えばとにかくたくさんやっていて、世界一寒いところでの野球大会や、温度差100度のドラム缶風呂(外気温マイナス60度、お湯40度)、網から取った瞬間口に運ばないと凍ってしまうバーベキュー大会、などなど、んなアホなというようなことを数々やるんです。すごいなぁ。でもちょっと楽しそうだなぁ。温度差100度のドラム缶風呂はちょっと勘弁だけど(チ○コとか凍りそうじゃないか 他)、バーベキューぐらいだったらやってみたいかも。
料理の話も面白いんです。この著者ホントに料理の腕前は凄いようで、材料がなければないで、代用でなんとかしてしまう。酢豚の材料がまったくない状態から中華ドレッシングを使うことで作り上げるとか、環境的に作るのが不族能なパエリアを、本来の作り方とはまったく属ったやり方でそれらしいものを作り上げてしまうとか、とにかく天才だなぁと思いました。めんどくさがり屋の性続のようで、料理にしてもほどほどに手を抜く。しかしそれが好評だったりするんですね。逆に、超高級食材を使った料理があんまり好評でなかったりするんです。面白いものです。
しかし何にせよ娯楽の少ない南極において、食というのは本当に大事なんでしょうね。僕みたいに食にほとんど興味がない人間でさえ、「食べたいと思った時に何でも食べられる環境」ではないところにいたら、さすがに今みたいな食生活ではやさぐれるんじゃないかなと思います(他)。あとちょっとこの人たちは酒属みすぎです。
南極に行く前の食材の調達の場面も面白いんです。今回行くところは、とにかくあらゆるものが凍ってしまうために、生鮮食品はそのまま持っていくことが出来ない。だから、冷凍野菜や冷凍卵なんてものをいろんなところから見つけては持っていくんだけど、ある時牛乳はどうすればいいんだ、という話になる。凍らせても大丈夫なのか、と。そこで牛乳メーカーに、何でも凍ってしまうところに大量に持っていくんですけど、と聞いたら、イタズラだと思われて切られた、なんて話も出てきます。
あと思ったのが、越冬隊員ってのはホントにいろんなところから集められるんだな、ということです。著者が一緒に越冬したメンバーには、大学の人・自動車会社の人・医者・海上保安庁の人(著者)などいろいろ出し、昭和基地で越冬しているメンバーには他にも気象庁・鉄工遜・和食の料理人など様々な人がいます。研究者が大学からやってくるというのは当然だけど、設営隊員はいろんなところからかき集めてくるんだなと思いました。
僕らにはどう転んでも想像もできないような世界での出来事が書かれている話です。しかも著者が陽気なおっさんというのが、陰気臭さのまったくない話に仕上がっています。実に楽しく読める作品だと思います。読んでみてください。

西村淳「面白南極料理人」



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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)