黒夜行

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復讐法廷(ヘンリー・デンカー)

こんなニュースがありました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091014-00000004-jij-soci

北海道の古書店で、本棚が倒れて子供が重傷、というニュースです。
本棚を床や天井に固定していなかったから、ということなので、普通の新刊書店とかではなかなか起こりえない事故だと思うんだけど、なんか古書店とはいえ、こういう事故が起こってしまうのは残念だなと思いました。
今日は、ヴィレッジヴァンガードについて書こうと思います。元ネタはこちらです。
友人の代理でヴィレッジヴァンガードの株主総会に出た人の話なんだけど、その中で興味深い数字が出ていました。
それが、売上における書籍の売上比が、13.5%だというのです。
1999年時はそれが30%弱だったらしいので、半分以下になっているというのが現状のようです。
ヴィレッジヴァンガードっていうのは、見かけると確かに入ってしまう店です。特に何か買うことはないけど、本に限って言えば、よくもまあこんな品揃えで成り立つものだなぁといつも思ってしまいます。それはつまらない本が置いてあるというのではなく、売れそうにない本が置いてあるからなんですね。その『売れそうにない』というのは、普通の新刊書店に普通に置いていても売れないだろうな、という本で、それをヴィレッジヴァンガードは、本を雑貨のように扱うことで売っているわけです。だからこそ、普通の新刊書店では売れない本が売れているわけなんですけど、しかし現実としては、書籍の売り上げ比率がどんどん下がっているのだそうです。
ちょっと前に、書店の経常利益率ランキングという記事を見つけたんだけど(こちらです)、ヴィレッジヴァンガードは11.1%と他を圧倒するとんでもない数字です。しかしそれは一方で、雑貨の売り上げ比率がどんどん上がってきている、ということでもあるんでしょうね。他の新刊書店の数字を見ればわかるように、新刊書店の経常利益率は1~2%程度です。本の売上が高かったらそこまで高い利益率にはならないでしょう。
でも、利益率の高い雑貨が売れてるならいいじゃん、という人もいるでしょう。でも、それはなかなか厳しいかもしれません。もし仮に、ヴィレッジヴァンガードに本が置いてなかったら、僕はヴィレッジヴァンガードには行かないでしょう。ただの雑貨屋になってしまった場合、あそこまでお客さんが店にやってくるのかどうか、僕には疑問です。ヴィレッジヴァンガードというのは、本屋なんだけど雑貨にも力を入れている、という形態だからこそうまくいっているはずで、基盤となる本が売れていないとすると、厳しくなるでしょう。
原因は分かっているんだそうです。昔は、本が好きなスタッフが入ってきていたけど、最近は雑貨が好きなスタッフが多く入っているという。そりゃあ、雑貨中心になっても仕方ないでしょう。ヴィレッジヴァンガードに合う本って、相当本好きじゃないとセレクト出来ないと思うんです。そういう人が、本屋としての魅力を失いつつあるヴィレッジヴァンガードで働きたいと思うのか。根本的な解決が難しそうな気がしますね。
ヴィレッジヴァンガードみたいな異端児はぜひとも残ってほしいと思うんで、頑張ってほしいものですね。
そろそろ内容に入ろうと思います。
本書は、1984年に邦訳され、その年の週刊文春ミステリーベスト10第1位を獲得した作品で、残念ながらその後絶版になっていた作品です。つい最近復刊されたんですけど、WEB本の雑誌の横丁カフェという書評(こちらです。ただこの書評、ネタばれがあるので注意。ネタばれされた状態で読んでも十分面白い作品ですけど、何も知らないまま読みたいという方は書評は見ない方がいいかと)で紹介されていて、面白そうだなぁと思ったので読んでみることにしました。
倉庫会社の事務員をしているデニス・リオーダンは、60年以上生きてきて些細な犯罪行為すら犯したことのない、実に真面目な男だった。その彼がある日、州外に拳銃を買いに行き、そしてその拳銃である黒人を射殺したのだった。
リオーダンはその足で警察に出向き、自白をするから裁判をしてくれ、とまくしたてる。そうして裁判に掛けられることになるのだ。
リオーダンには娘がいた。しかしその娘は、一人の非道な黒人の手によって強姦され、そして殺されてしまった。
クリータス・ジョンソンというその黒人は、職務質問をされた後、身体検査で女性物の装身具が見つかり、連行される。すぐさま、近くで起こった強姦殺人事件の犯人だと判明したのだが、しかしなんとクリータスは、別の事件で保釈中であったために、強姦事件について無罪放免、釈放されてしまうのだった!
その対応に納得がいかず、はらわたが煮えくりかえったリオーダンは、自らの手で裁きを与えるべく、クリータスを射殺したのだった。
リオーダンは自白の中で、はっきりとクリータスに対する明確な殺意を語っている。裁判以外のやり方でならまだ刑が軽くなる可能性もあるのだが、とにかく裁判に掛けられることを望んでいるのだ。
とある事情で検事から弁護士になったばかりのベン・ゴードンは、ひょんなことからリオーダンの弁護を担当することになった。証拠だけから判断すれば、どう考えても明らかに有罪であるこの事件。しかしゴードンは、被害者は公正な弁護を得られるべきだという信念の元、考えうる限りの手を尽くしてリオーダンを弁護するのだが…。
というような話です。
僕は外国人作家の作品は苦手なんですけど、この作品はすいすい読めました。いつもは、文章が合わなかったり、登場人物の名前が覚えられなかったりして読み進めるのに苦労するんですけど、本書はとにかく読みやすかったですね。25年ぐらい前の作品ですけど、文章や登場人物は古びていないなぁという感じがしました。
内容的にはまさに法廷物で、法廷での闘いが本書のほとんどを占めます。これがまた迫力があるというか、緊張感に溢れているわけなんです。著者は元弁護士らしく、さすがにリアリティがあります。裁判とか見たことないし、ましてアメリカの裁判なんか映画とかでさえ見たことないと思うんだけど、一つ一つのやりとりとか議論の応酬、細かな戦略なんかが本物っぽい感じがして面白かったです。特に途中でゴードンは、それまでの裁判ではありえない(詳しいことは知らないけど、本書を読む限りそうらしい)トリッキーな手を使うことになります。ネタばれになるからそれがどんな手なのかは書かないけど、そこでの議論の応酬は緊迫感があってよかったです。
本書は、リオーダンという一人の男を裁く裁判なわけですけど、同時に法律の問題についても焦点が向かうことになります。それが、まさにクリータスを釈放させることになった、ニューヨーク州の特殊な法律です。なかなか複雑なので、どんな法律なのかはここには書かないけど(この法律ってまだあるのかなぁ)、その法律のおかしさについては誰もが理解出来るような、そんな内容です。
リオーダンは、法によって守られたクリータスを自ら裁くべく殺人を犯した。ゴードンは、法そのものに重大な問題があるのではないか、という方向に陪審員の目をむけさせることで、裁判の流れを変えようとしたのだ。
この陪審員の存在も、裁判員制度が始まった今となっては以前よりはより近いものと思って読めるのではないかなと思いました。アメリカの陪審員と日本の裁判員では役割が違うけど(僕の知識によれば、アメリカの陪審員は有罪か無罪かだけを判定するけど、日本の裁判員は有罪だった場合の量刑まで決めるんだったと思う)、とはいえ一人の人間の運命を握るというその重大さについては理解できるのではないかなと思います。まあ、本書で描かれる陪審員は、他の事件の陪審員よりも遥かに厳しい状況に置かれるわけですけどね。実に難しい判断を迫られる。陪審員が最後いかなる結論を下すのか、そこに至るすべての過程が迫力がある作品だなと思いました。
外国人作家の作品にしては実に読みやすいし面白い作品だなと思いました。外国人作家の作品を苦手にしている人でも読めるんじゃないかなと思います(外国人作家の作品が苦手な僕もすいすい読めましたし)。なかなか骨太の法廷物です。ぜひ読んでみてください。

ヘンリー・デンカー「復讐法廷」



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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)