黒夜行

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サクラダリセット(河野裕)

さて今日は時間がないので本屋の話は省略。
内容に入ろうと思います。
本書は、今ライトノベルの世界ではそこそこ話題になっている(はずの)作品です。帯の推薦文を乙一が書いています。そんなこともあって、ちょっと気になる作品だったので読んでみることにしました。
舞台は日本のどこかに存在する咲良田という街。そこは、住人の半数が能力者という変わった街。しかもその能力は、咲良田以外では発動しないという変なルールがある。咲良田には管理局と呼ばれる組織があり、その管理局が能力者を管理・監視している。
高校生である浅井ケイは「奉仕クラブ」に所属している。奉仕クラブは管理局の直轄みたいなところで、能力を使うことで何らかの仕事をするところだ。奉仕クラブの顧問であり、管理局にも所属している津島信太郎から時折依頼を受け、同級生の春埼美空と共に行動する。
その日ケイと美空が受けた依頼は、死んだ猫を生き返らせることだった。別の高校に通っている村瀬陽香は、自分が飼っている猫が事故で死んでしまったから生き返らせて欲しい、という。奇妙な依頼だったが、管理局が関わっているならば深く考えることもないだろう。
ケイの持つ能力は、あらゆる情報を永遠に記憶しておくことが出来るというもので、それほど大したものではない。ただ、美空の持つ能力が凄い。「リセット」と口に出すだけで、世界を三日分なかったことにすることが出来るのだ。ケイと美空の能力を組み合わせることで、大抵のことはなんとかなる。
二人は、猫が事故に遭うよりも前の時間までリセットをし、そこから猫が事故に遭わないで済むように対処しようと考えた。しかし、リセット後の世界で、リセット前には起こらなかった出来事が起きるようになり、徐々に齟齬が大きくなっていくのだが…。
というような話です。
ライトノベルのレーベルから出ていますけど、本書は一般文芸で出ててもあんまり違和感のない作品かなと思います。集英社文庫とか講談社文庫とか講談社ノベルズなんかから出ててもおかしくはないような、そんな感じのエンターテイメント作品だなと思います。ライトノベルとしてどうなのか、というのは僕にはちょっとわかりませんけど。
僕は正直、全体のストーリーについてはイマイチよくわかりませんでした。結局誰が何をしたために何がどうなって結局どうまとまったのか、みたいな部分が微妙に理解できていなかったりします。大枠では、結局あの登場人物がああいうことをしようと企んでいて、それに対してもう一方がこういう意図を持って対処しようとした、みたいな構図なんだろうけど、細かい部分で何がどうなっているのかというのがちゃんと分かっていないような気がします。美空や村瀬の能力の発動条件とかも理解し切れていない気がするし(それはストーリーにちょっと関わるんえ理解できないとダメなんだけど)、ケイや津島がどんな意図を持って行動していたのかというのもイマイチよくわからない部分があったりしました。
それでも、全体の雰囲気が結構好きな作品です。西尾維新の小説のテンションをちょっと落としたような小説、あるいは辻村深月の小説をもう少し薄く引き延ばしたような小説、という印象なんですけど(さすがに西尾維新や辻村深月と比較すると大分落ちるんで、こんな表現になりますけど)、僕の好きなタイプの小説だなと思います。ケイにしても美空にしても、何を考えているんだか、あるいは何を考えていないんだかよくわからないようなキャラクターで、その二人の視点が交互に入れ替わることで話が進んでいくので、全体としてふわふわしたような印象の作品でした。うまく説明できないけど、イマドキっぽい無気力さが全編に漂っていて、僕はそういう雰囲気が結構好きだったりするんでいいなと思いました。
ストーリーがきちんと理解できなかったという部分とも関わるけど、説明不足だなと思うような文章もところどころでありました。そういう意味では、文章はさほどうまくないのかもしれません。ただ、最初から最後まで一定した雰囲気を保っているし、その醸し出す雰囲気が結構魅力的だなと思うんで、僕は楽しめました。
先ほども書いたけど、正直全体のストーリーをうまく理解できたかと言われると、ちょっとそれは微妙なところがあります。でも、キャラクターとか文章が醸し出す全体の雰囲気は結構好きな感じです。別の作品も読んでみたいと思わせる作家だなと思います。桜庭一樹とか橋本紡みたいに、その内一般文芸の世界に来るんじゃないかなぁとか勝手に思っています。まあ分かりませんけどね。

河野裕「サクラダリセット」



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Comment

[3633]

先越されちゃいましたか。最近ラノベに食傷気味だけど、読んでみようかな。
つい3日ほど前、『円環少女』の長谷敏司が早川からガチSFな『あなたのための物語』という作品を出しましたけど、かなりよかったですよ。あと、明日『ぷりるん』の十文字青が一般文芸デビューします。『純潔ブルースプリング』という作品です。表紙イラストがホルモーの人です。幻となってしまった五年前のデビュー作です。この人の内面描写は、辻村深月と違ったところで、私は同じくらい好きですね。

[3634]

ラノベはたまに読みたくなりますね。気になるのがあれば、ですけど。しかし、ストーリーは正直よくわからなかったです。雰囲気はいいんですけど。
「あなたのための物語」は今書影をネットでみましたけど、表紙がいいですね。しかしub7637さん、よくそんなの見つけましたね。SFは僕の中で好き嫌いがかなり分かれるんで読んでみるかどうかわかりませんけど、気にしてみます。
十文字青も一般文芸デビューですか。最近ホント多いですね、ラノベから一般文芸に来る作家は。ラノベがそれだけレベルが上がってきた、ということでしょうかね。これも、読むかどうかはまだ何とも言えないですけど、気にしてみます。ありがとうございます。

[3635]

読みました!
黒夜行さんにはもうしわけないですが、個人的には、いまいちだったかも。あれこれやろうとして、全体的に散漫になってる印象が強かったです。でも、これから経験を積めば、伸びしろのありそうな作家だなぁと思いました。

[3636]

おぉ、読まれましたか!
僕なんかは、すごく個人的な意見なんですけど、読んだ本の感想が合わなかったりするとちょっとホッとします。っていうのも、みんながみんな同じ本を良いっていうようになったらつまらないし、本も売れなくなるじゃないですか?いろんな読者がいて、いろんな好みがあるからこれだけ本は多様性があるわけで。理屈っぽいですけどね。
これからどう活躍してくれるか、ですね。僕はちょっと期待して注目しておくつもりです。

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)