黒夜行

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僕とばあばと宝くじ(パトリシア・ウッド)

ウチの店ではライトノベルがよく売れます。ライトノベルというのは、表紙がマンガみたいな感じで、挿絵も結構あるような、一応中高生向けと謳っているけど買っているのはほとんどおじさんという、あのジャンルです。
僕が担当になった当初もそれなりには売れていましたが、それから結構ちゃんと手を入れるようになってから、ライトノベルジャンル全体がかなり売れるようになってきました。
その中でも売上トップを独走するのが電撃文庫で、とにかく他のレーベルと比較しても圧倒するほどの驚異的な売れ行きです。
さて、何でこんな話をしているのかというと、今月発売された電撃文庫の売れ行きがどうもよろしくないからです。
ラインナップとしては相当素晴らしいんです。ライトノベルとか読まない人には分からないと思いますけど、「狼と香辛料」「俺の妹がこんな可愛いはずがない」「ソードアート・オンライン」という、驚異的に売れるシリーズの新刊が出ているし、他もまあ悪くない(たぶん)ラインナップが揃っています。
なのに、売れ方が鈍い。何でだ!
原因がよく分かんないんです。お盆前に発売になったからみんな帰省したのかとも思うけど、ライトノベルを買うような人はずっと部屋にいそうな気が…(偏見っすか)。台風が来る前に発売になったし、台風のせいで売れなかったとも考えにくい。これが微妙なラインナップだったらまあ仕方ないかで終わるんだけど、どう考えても売れるラインナップだから理解できないんですね。
まあ確かに、ここ最近はライトノベルの売上が下がりつつあったと思います。というか、その表現は正確ではないですね。ライトノベルのジャンルの売上はそんなに変わっていないはずなんだけど、新規参入が激しいので、一つのレーベル辺りの売れ行きが相対的に下がっているということなんだと思います。
だから人気シリーズ作の新刊が出ても、以前ほど動きが鈍るということはこれまでもあったんだけど、でも今月の電撃文庫の新刊は、そういう効果を加味してもまだ理解できないくらい売れていないんですね。
さて、土日と僕は休みでしたが、その間にバリバリ売れているということはないでしょうかね。ライトノベルがバリバリ売れてくれないと売上的にちょっと困ってしまうので、是非頑張ってほしいものだなと思います。
そろそろ内容に入ろうと思います。
主人公のペリーは、軽度の知的障害を持つ青年。<ホルステッドのマリン用品店>で仕事をし、ばあばと二人暮らしをしている。親類はいるけど、誰もばあばと関わろうとしない。金をせびられると思っているのだ。職場の同僚であるキースや、職場のオーナーであるゲイリーなどの人々に助けられ、日々穏やかに生きている。
そんなペリーの生活が一変したのは、ばあばが死んでしまってからだ。突然親類がやってきて、ペリーがこれまで住んでいた家を奪い取ってしまう。ペリーは一人暮らしを余儀なくされるけど、そんなある日ペリーは宝くじで一万二千ドル(約14億円)を当てる。
一躍有名人になったペリーだが、そこからが大変だった。ペリーの賞金を奪い去ってしまおうとする親類が忍び寄ってくる。ペリーを救ったのは、死んでしまったばあばの教えと、彼の友人たちだった…。
というような話です。
読んでいると、現代の「アルジャーノンに花束を」と言われた、「くらやみの速さはどのくらい」にちょっと似ていると思いました。まあ知的障害者を主人公にすると文章はどれもこういう感じになるんだろう、ということですけど。
なかなか悪くない作品だと思います。ちょっとストーリーに起伏がなくて退屈な部分はあるけど、キャラクターがしっかりしてるし、何よりもペリーが実にいい奴なのだ。こういう純真な人間の素朴な疑問とか真っ直ぐな生き方みたいなものは、時々人を安らかにしてくれるものだ。まあ、なかなか普通の人がこういう生き方をするのは難しいと思うんだけど。
ストーリー自体は、正直宝くじに当たったことがすごく関わっていくのかというとそうでもないです。もちろん宝くじに当たるという部分なしで本書は成立しないけど、それよりも、ペリーとその愉快な仲間たちの話がメインになっていっています。宝くじはそのスパイスみたいな感じです。
金の亡者みたいな親類からいかにペリーを守るかということで一致団結する面々とあーだこーだやっている内に、ペリーの周囲にいろんな変化がやってくることになります。その中で、ペリーは成長していくし、いろんな意味で時は進んでいく。そういう成長の物語ではないかなと思います。
ただ本書は、アマゾンで100以上のレビューがついて、そのほとんどが五つ星だと書いてあるんだけど(日本のじゃなくてアメリカの方のアマゾンかも)、そこまで大絶賛というほどでもないような気がします。分かりやすくて感動できる作品がいいという人にはまあいいかもしれません。僕としてはやっぱり、ストーリーがちょっと平坦すぎるというのがマイナス評価という感じです。
まあ決して悪い作品ではありません。ばあばの教えや友人の忠告をきちんと守り、きちんとした生き方をしていくペリーを見ていると、何だかいろいろ考えさせられます。お金って何なんだろうな、みたいなことも考えたりするかもしれません。気が向いたら読んでみてください。

パトリシア・ウッド「僕とばあばと宝くじ」



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Comment

[3610]

> 今月発売された電撃文庫の売れ行きがどうもよろしくないからです。
コミケがあったからじゃないですか? と、適当発言をしてみます。amazonだと、どれもかなり売れてるみたいですけどね。
ソードアート・オンラインは、普段ライトノベルを読まない人でも楽しめる、いい作品だと思いますよ。黒夜行さんみたいな本読みには、物足りないと思いますけど。(ついでに言うと、自分にも少し物足りない)
> 新規参入が激しいので、
そういえば、黒夜行さんとこ、一迅社文庫は入ってます? 最近出た「ぷりるん」って作品ですが、超オススメです。表紙は萌えですが、中身が劇物な、桜庭一樹の「砂糖菓子の弾丸」を連想していただければ(物語は大分違うけど)。今月末に一般文芸デビューが決まってる作者ですけど、文章がうまく、普段ライトノベルを読まない本読みでも満足できるレベルの高い作品だと思いますよ。

[3611]

それは僕もちょっと考えたんですけど、コミケよりもかなり前に発売されたからなぁ。
それともあれですか?コミケってもしかして、電撃文庫とかも出店してて、そこで新刊とかも売ってるんですかね?だとすれば、普段ウチで新刊を買ってくれる人がコミケに行って買ってしまったということかもしれませんが…。
「ソードアート・オンライン」の人は、デビュー作から一気に人気になりましたよね。凄いなと思いました。今個人的に気になってるライトノベルは、「サクラダリセット」って奴なんですけど、読まれました?乙一が絶賛、とか帯に書いてあるんですけど…。
一迅社文庫、入ってきますよ。「ぷるりん」ありましたね。かなり売れていました。なるほど、桜庭一樹みたいに一般文芸っぽいって言われると、ちょっと気になりますね。読んでみるかもしれません。
ライトノベルは本当に分かんないんで、こういう情報は凄く助かります!また何か、これは結構いいよというような情報がありましたら教えてください!

[3612]

『サクラダリセット』は同じく気になってますけど、残念ながら読んだことないです。同じ作者の短編なら読みましたが、良くできてるし面白い内容でした。ただ、たしかに乙一みたいな作風ではあるんですが、内容的には、ちょっともの足らなかったですね。だからといってサクラダリセットがつまらないかは分かりませんけど。
『ぷりるん』は売れているのですか。いまだ日の目を見ぬ作者ですが、ポテンシャルは西尾維新や乙一に負けないくらいだと思っています。長らくファンだったりします。

[3613]

「サクラダリセット」の人ってデビュー作じゃないんですか?勝手にデビュー作だと思ってました。なるほど、既に作家として作品を出している人なんですね。その内読んでみようかなぁとは思ってるんですけどね。
「ぷりるん」は買ってしまいましたよ。「薔薇のマリア」の人ですね。別の方から、「薔薇のマリア」と「円環少女」はオススメだって言われたことがあるんですけど、なかなかシリーズ物を読もうって気にならないんです。
「ぷりるん」は売れてますけど、他の一迅社文庫の新刊に比べれば、という感じです。まあ今日発注してみたので、たくさん売れるように頑張ってみます。

[3614]

サクラダリセットがデビュー作で、私が読んだのは、そのあとに書いた短編のやつです。

[3615]

なるほど、そうでしたか。
ライトノベル作家はやっぱり書くのが早くないと生きていけないんでしょうね。

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7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
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11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
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コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

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2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
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1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
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4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
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6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
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16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
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