黒夜行

左脇のプロフィールにある「サイト全体の索引」から読みたい記事を探して下さい。

5000年前の男 解明された凍結ミイラの謎(コンラート・シュピンドラー)

さて今日もどうにも時間がない。本読むのが遅くなったのかなぁ。そんなことはないと思うんだけど。昨日も書いたけど、8月前半はいろいろバタバタするんで、落ち着いたらまたちゃんと本屋の話は書こうと思います。ただ正直、書くことがなくなってきたというのも事実で。本屋の話だったらいくらでも書けると思ってたけど、なかなか難しいものです。
内容に入ろうと思います。
本書は、まあタイトル通りの作品です。1991年に、オーストリアとイタリアの国境付近の山で発見された遺体が、実は5000年前のものだったという考古学上の大発見を、調査の指揮を振るった著者が綴った作品です。
本書は大きく二つに分けることが出来ます。前半は、発見時のドタバタを描いたもの、そして後半は考古学的な調査からジャン明した事実が描かれます。
このミイラを見つけたのはとある夫婦。山登りが趣味で、その過程でたまたま見つけたのだ。
その後警察に連絡したり、あるいは救助隊が出動したりということになるのだけど、当初はそこまで古い遺体だと思われてはいなかった。現場で遺体をみた人たちは、かなり以前に亡くなった人だろうとは思ったが、せいぜい100年とか200年とかそれぐらい前のものだろう、と思っていた。だから、他の山岳遭難者の死体回収と同様の手続きが取られたのだ。
しかしその後段々と、これは考古学上の大発見かもしれないという認識が広まって言って、そこから話がどんどん大きくなっていくわけです。
問題を複雑にしたのが、遺体の発見場所。ここはまさにオーストリアとイタリアの国境で、所有権や研究をどこがやるのかという話が出た。また山登りが得意でないとなかなか自力で行くのが困難な場所にあるのでヘリを飛ばすしかないが、しかし天候次第で行けなくなってしまったりする。遺体が固い雪に埋もれていたことも回収作業を難航させる要因になった。
そう言ったわけで、通常の考古学的な発掘とはほど遠い形にはなったけれども、公式発掘以前に遺体周辺に来た人間全員に話を聞いたりすることで状況を把握することに努めたようです。
さて、そういう発見のゴタゴタが終わり、正式に調査が始まってから判明した様々な事柄を書いているのが後半です。
ミイラが携帯していたものはどういう用途なのか、どんな経緯で死に至った場所までやってきて、そしてどういう理由で死んだのか、故郷はどこだろうか、というような様々な事柄について、現時点で判明していることを正確に書いています。今後別の見解が現れる可能性は十分にあると断った上で、執筆時点で結論が出ている部分について書かれています。
前半の発見のゴタゴタについては結構面白かったんです。考古学的な発掘って普通は、この辺に何かありそうだと辺りをつけて掘り始めるか、あるいは一般人が古そうな価値のありそうなものを見つけて、その後本格的な発掘になるかどちらかだろうと思うんです。で、そのどちらの場合も大抵、ほとんど手つかずの状態から発掘を始めることが出来るし、紛失したり破壊されたりと言ったようなことも起こらないはず。
しかし今回の場合、事情がまったく違いました。とある夫婦が遺体を見つけたけど、その後関わった多くの人も含めて、当初それが考古学上の大発見だという認識をしていた人はいません。5000年前の行き倒れのミイラが見つかったことなんか過去にないわけで、それは仕方ないことです。
だから公式な発掘が始まるまでに多くの人が触ったり何かを壊したり写真を撮ったりということをしています。その公式発掘までに関わった人間すべてから話を聞き、元々どういう状況にあったのかということをほぼ完璧に把握しようとするところが凄いし、考古学上の大発見だとわかる前に大雑把な回収作業をした教授が後から非難されたりといろんなことが起こります。
見つかった場所がちょうど国境地帯だったり、まさに見つかった場所が自治領だったりと、いろいろ複雑な事情もあって発見されて以降しばらくドタバタが続くことになります。この部分は結構面白いと思います。
ただ後半の、考古学上の発見については、ちょっと眠かったです。だって、太さが何センチ、長さが何センチ、材質はどうで…、みたいなことがずっと書いてあるんです。そりゃあ確かに、考古学上の観点からすればそういう部分は大事なのかもしれないけど、でも読んでる方としてはかなり退屈ではないかなと思います。ミイラが身に付けていた様々なモノについていちいちそういう説明がされるので、かなり飛ばし読みしました。
というわけで、全体的にはちょっと何とも言えない評価ですけど、前半の発見のゴタゴタはなかなか面白いです。後半の考古学的な記述はちょっと僕には辛かったです。

コンラート・シュピンドラー「5000年前の男 解明された凍結ミイラの謎」



関連記事
スポンサーサイト

Comment

[3602]

こんばんは。
今朝の地震はいかがでしたか? 本の下敷きに…ということはありませんよね。最近、更新が途絶えてしまったので心配しています。ご無事ならそれで好いのですが…
先ほど、図書館で文芸春秋を読んできました。芥川賞の『終の住処』が目的です。単行本の表紙はかなりレトロな雰囲気ですね。ちょっと内容と合わないような気がします。そんな渋いものではありませんよ(笑)。
受賞者の磯崎さんが三井物産の社員(管理職)ということも話題ですよね。インタビューを読みましたら「休日にゴルフに行ったり、語学学校に通っている人がいるでしょ。僕の場合はそれが小説を書くことなんですよ。別に特別なことではないはず」と答えています。いかにも今風ですよ(笑)。
内容ですが、まぁ“絶賛”というほどのことではないような感じでした。夫婦の日常という凡庸な些事(?)の積み重ねですね。と偉そうに書いてしまいましたが、私の読み方がいけないのかも知れませんので、ここまでにしておきます(汗)。
そういえば直木賞候補の『秋月記』(葉室麟さん)、こちらは素晴らしかったですよ。藤沢周平さんの再来かと思いましたもの。時代物も好いなぁ、としみじみ味わいました。機会がありましたら、お読みくださいね。
今、私は『わたしたちが孤児だったころ』(カズオ・イシグロ氏)を読み途中です。ところが、なかなか読み進みません。ミステリと単純に割り切ってしまえばストーリーだけを追えばよいのでしょうが、氏の作品は「現実よりちょっと浮いた」作風でしょ。この世界にストーンと入り込めません。とはいうものの、前半部分は何とかクリアしました。後半を期待したいと思います。
レビューを読みましたら、日本人の少年の会話文の三単現のsが付いていないとか、過去形なのにedが抜けている、とありました。それって原語の話?と和訳で読んでいる私は少々嫉妬してしまいました(笑)。
では、この辺で。ご無事でお過ごしくださいますように…

[3603]

ご心配かけてすいませんです。実は旅行に行っておりました。台風&地震が猛威を揮っていた時は、日本中で恐らく唯一雨が降っていなかっただろうところにいました。快適でした。8月前半はいろいろ予定が目白押しなんですけど、この旅行がメインですね。
本に埋もれて死んでしまったっていう人のニュースありましたね。凄いもんだと思いました。
へぇ、芥川賞の人って三井物産の社員なんですね。最近は何にしても、作家一本で食べていくっていうのはほとんど現実味がないから、きちんと仕事を持っているというのはいいことだと思います。
芥川賞っていうのは掴みどころのない作品が多いような気がしますからね。今まで僕が読んだ中でよかったものをパッと思い出せるとしたら、「蹴りたい背中」ぐらいですかね。いいんだか悪いんだかよくわからないような作品ばっかりな気がします。
一方で直木賞の場合、まあ好みの問題ですけど、いいか悪いかっていうのは割とはっきり判断できますよね。それが文学とエンターテイメントの違いかな、とか思ったり。
「秋月記」はいいらしいですね。でも読むならまず、藤沢周平とか山本周五郎とかを読むことにします。なかなか時代小説に手が伸びないんですけどね。やっぱりちょっと渋いんで、まだ僕には早いような気がしてしまいます。
「わたしたちが孤児だったころ」はまだ読んでないです。カズオ・イシグロは好きですけど、確かに読むのに時間掛かる作家ですね。すんなりとは入り込めないというのもよくわかります。まあ無理せず読み進めて行ってくださいね。僕は相変わらず何なのかよくわからない本ばっかり読んでます。ますますドラさんと読む本が被らなくなりそうなラインナップです(泣)
ではでは。また明日から仕事を頑張ろうと思います!

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

http://blacknightgo.blog.fc2.com/tb.php/1518-cc4a5678

 | ホーム | 

プロフィール

通りすがり

Author:通りすがり
災害エバノ(災害時に役立ちそうな情報をまとめたサイト)

サイト全体の索引
--------------------------
著者名で記事を分けています

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行~わ行

乃木坂46関係の記事をまとめました
(「Nogizaka Journal」様に記事を掲載させていただいています)

本の感想以外の文章の索引(映画の感想もここにあります)

この本は、こんな人に読んで欲しい!!part1
この本は、こんな人に読んで欲しい!!part2

BL作品の感想をまとめました

管理人自身が選ぶ良記事リスト

アクセス数ランキングトップ50

TOEICの勉強を一切せずに、7ヶ月で485点から710点に上げた勉強法

一年間の勉強で、宅建・簿記2級を含む8つの資格に合格する勉強法

国語の授業が嫌いで仕方なかった僕が考える、「本の読み方・本屋の使い方」

2014の短歌まとめ



------------------------

本をたくさん読みます。
映画もたまに見ます。
短歌をやってた時期もあります。
資格を取りまくったこともあります。
英語を勉強してます。













下のバナーをクリックしていただけると、ブログのランキングが上がるっぽいです。気が向いた方、ご協力お願いします。
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

アフィリエイトです

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
14位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
11位
アクセスランキングを見る>>

アフィリエイトです

サイト内検索 作家名・作品名等を入れてみてくださいな

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

カウンター

2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)