黒夜行

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二重らせん(ジェームズ・D・ワトソン)

さて、仕事の方はようやくひと段落ついた感じです。恒例の夏の100冊の展開も終わり、飾り付けやら追加の補充やらもなんとか手配をして、とりあえず落ち着いた感じです。あと、半期毎にやらなくてはいけない、出版各社が毎年組むフェアの中から自店に必要なものを選んで発注するという仕事も終わり、とりあえず懸念だった仕事は大体終わりました。いつも通り、通常の仕事をするような感じに戻ったので、多少楽になりました。後は、いくつかPOPのフレーズを考えて作ってもらうのぐらいでしょうかね。
今、今月文庫になる「永遠の0」のPOPを作ってもらっていて、あと予定としてあるのは、「東京バンドワゴン」、「アジア新聞屋台村」のPOPと、あと特定の本というわけではないんですけど、下山事件のPOPを作ってもらおうと思っています。漫画家の浦沢直樹の新作が下山事件に関する内容らしいんで、だったらその浦沢直樹の新作に絡めたPOPを作ってもらって文庫を売ろう、という発想です。
ウチの店には、しかしPOPを上手く描ける人間がたくさんいて助かります。三人ぐらい上手い人がいるんで、何か思いつくとすぐ頼んでしまいます。最近ではPOPを含めたいろんな施策のお陰で、「凍りのくじら」という本がやたらめったら売れています。昨年末に発売されたものですが、上半期のウチの文庫の売上のトップ10内に入っています。
上半期の売上のデータを見ていましたけど、文庫はトップ10内が既刊ばっかりです。思い出せる限り書いてみると、「天使と悪魔 上中下」「思考の整理学」「向日葵の咲かない夏」「名探偵の掟」「凍りのくじら」「重力ピエロ」みたいな文庫がトップ10内にいます。どれも今年出た新刊ではなく、今年以前に出ている既刊です。どれも話題作ではありますが、やっぱり下手な新刊より既刊を売った方がいいなとよく思います。
僕はとにかく既刊を売り伸ばそうと日々いろいろと頑張っています。新刊に頼った品揃えをしていると、どうしても他の書店と差のつかない、金太郎飴みたいな売場になってしまいます。いろいろ既刊をチャレンジすることでロス(返品)が増えてしまうということはありますが、それでもこれからも、いかにして既刊を売るかということをメインに、何だったら既刊を売るために新刊の力を利用してやる、ぐらいの勢いで頑張っていこうと思っています。
毎回言っていますが、僕の目標はとりあえずコミックの売上を抜くことです。今まで一度も実現したことはありませんが。先月は久々にボロ負けでした。雨が多くて文庫がちょっと伸び悩んだというのもあるけど、コミックの方でいい新刊がバリバリ出ていたというのも原因の一つ。今月もなんとかコミックの売上を抜けるようになんとか頑張っていきたいなと思います。
全然話は飛びますが、最近また客注の抜き漏れが増えてきています。客注の抜き漏れというのは何かというと、お客さんからの注文品として入荷した本を、それと気づかずに売場に出してしまったり返品してしまったりすることです。以前、散々僕が指摘しまくった末に、ようやく何とか抜き漏れをほぼ無くすことが出来るようになってきたのに、最近またダメになってきています。一つ何か出来るようになると、今まで出来てたことが出来なくなるんでしょうか?何にしても、やる気はともかくとして、相変わらず社員の能力は劇的に低いなぁと感じる今日この頃です。やる気だけでカバー出来るぐらいのレベルの低さではないので、どうしたものかなと思います。
まあそんなわけで、本屋の話をちゃんと書くのは久し振りだったので、テーマを決めずにあれこれと書いてみました。
そろそろ内容に入ろうと思います。
本書は、DNAの二重らせん構造を発見し、ノーベル賞を受賞した二人の科学者の一方、ワトソンが書いた作品です。もう一人の発見者はクリックと言います。ワトソンとクリックと言えば、科学の世界では有名です。二重らせん構造の発見は、世紀の発見と言われるほどの成果で、ワトソンは若くしてものすごい聖杯を手にすることになるわけです。
本書は、ワトソンとクリックがいかにして二重らせん構造の発見に至ったのか、という話を、<ワトソンの主観>に沿って書いてある作品です。客観的に事実を検証するのではなく、ワトソンがその当時どんな風に物事を見ていて、何を考え、どう感じていたのか、ということを重視して書かれているということです。まえがきでも著者は、「おそらくこの物語は、ほかの関係者の手で書かれたならば、ちがった形になったところもいくつかあるだろう」と書いています。あくまでも、著者の主観による作品である、ということが重要です。
全体的な内容としては、科学の話とはあまり関係のない日常的な話に終始していきます。ワトソンがDNAの研究に没頭するようになるまでどういう道のりを歩んできたのか、クリックとはどのようにして出会ったのか、イギリスの科学界の変な慣習、同僚や周囲の人間とのやりとり、と言ったような部分はまだ科学っぽい感じではあるけど、友人と旅行に行っただの、妹が遊びに来ただのと言った、まあ言ってしまえば瑣末な部分というのも多々含まれています。
二重らせんの発見は、X線による観察を続けているのにDNAそのものにはさほど興味のない科学者だとか、思いついた自説を誰彼かまわずに喋り倒さなくては気が済まない科学者だとか、遠く離れたところにいたライバル科学者だとか、そういういろんな科学者との関わりあいの中で発見されたものでした。
僕はこれまで、二重らせん発見のストーリーというのはきちんと読んだことがなかったと思います。生物学上の大発見であり、それをクリックとワトソンという科学者が発見したのだということも知っていたし、その発見にはいろんなごたごたがあったということもなんとなく知っていましたが。いろんな科学系の本を読んでいると、ところどころにチラチラと記載があるんだけど、でもそのストーリーのすべてを読んだことはなかったんです。本書は、昔から読もう読もうと思っていた本なんです。
しかし、しかしですよ、あーつまんなかった!とにかくつまんない!こんなにつまんない科学の本があっていいんでしょうか?もうとにかく、最初から最後まで面白いところなんてまったくありませんでした。あんたが普段どんな感じで過ごしているか、なんてことはどうでもいいんだよ!もっと科学の話を書いてくれ!知的好奇心を満足させるような描写が読みたいんだよ!ライバルとの争いでもっと劇的なことはなかったのか?発見に至る軌跡でもっとドラマはなかったのか?二重らせんの発見を巡るゴタゴタみたいなのがあるはずなんだけど、それは何?
もうとにかく、隅から隅までつまらなかったです。面白いところなんて一片もありませんでした。久しぶりにこんなに面白くない本を読んだなぁ。誰か、二重らせん発見を扱った作品で、メチャクチャ面白い本ってないですか?口直しに是非読みたいものです。

追記)amazonのレビューを読む限り、世間的な評価は結構高いみたいです。ホントに?僕には信じられない駄作にしか思えなかったんですけど。うーむ。やっぱりこれまで読んできた理系本が結構レベル上質だったってことなのかなぁ。わかんないけど、とにかく世間的には評価はいいらしいんで、きっと僕の評価が間違ってるんだと思います。

ジェームズ・D・ワトソン「二重らせん」



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Comment

[3569]

瀬名秀明の本など、遺伝子に関する本はいろいろあると思います。
アマゾンの感想は、ワトソンの主張に対して懐疑的なのが多いです。
それはワトソンは、他人の研究&発見を盗んだ可能性が濃いということです。

[3570]

瀬名秀明も遺伝子の本を出してましたか。
ロボットとか科学全般の本は見たことありましたけど。
ちょっと何か探してみます。
ワトソンが他人の成果をパクったみたいな話は聞いたことがあるんですよね。
その辺りのことをもっと詳しく知りたいところです。
でも、科学にしても数学にしてもそうですが、素晴らしい成果を挙げた人間が必ずしも評価されるというわけではないですよね。
そういう本をいろいろ読んできたので、大変だなぁ、と思います。

[3571]

瀬名秀明は、『パラサイト・イブ』も遺伝子の話です。
ミトコンドリアに関する本も、数冊出しています。
>「ワトソンが他人の成果をパクったみたいな話は聞いたことがあるんですよね。
その辺りのことをもっと詳しく知りたいところです。」
『二重らせん』ジェームズ・D・ワトソン0のアマゾンの感想で何冊か紹介されています。

[3572]

[3573]

いろいろありがとうございます。
「ダーク・レディと呼ばれて」はなかなか面白そうですね。
amazonで見たら、中古しかなさそうでしたが…。
化学同人の作品は、クレイグ・ベンター(でしたっけ?ヒトゲノムを解読した人)の本を読んでかなりよかったので、期待してもいいかもしれません。
「パラサイト・イブ」も確かにそうでしたね。
読んだけど忘れてました。
ミトコンドリアが出てきたなぁぐらいの記憶です。

[3574]

こんにちは。
「二重らせん」は科学に対する知的好奇心を満足させてくれる本ではありませんが、研究生活の在り方というものを考えさせてくれました。
科学系の本でしたら、もうお読みになってらっしゃるかもしれませんが「世界でもっとも美しい10の科学実験」は優れものでしたよ。
ところで、本屋さんのPOPには、いつも感心させられています。。。

[3575]

こんばんわです。
なるほど、研究生活のあり方を知る、という読み方があるんですね。僕は理系でしたけど研究なんてものはやってないので(中退しただけですけど)、そういう発想はなかなかなかったですね。
「世界でもっとも美しい10の科学実験」は、まだ読んでないですね。「世界でもっとも美しい10の数学パズル」ってのは読んだことあるんですけど、これは正直そんなに面白くなかったですね。10の実験の一つはあれですよね、電子を一つずつ放射して干渉膜が出来る、ってやつ。日本人でしたっけ、あれは。
ウチにも超がつく優秀なPOP職人がいるので、本当に助かります。僕は、フレーズは考えられるんですけど、自分では描けませんですね…。羨ましいです、描ける人は。

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「二重らせん」ジェームズ・D・ワトソン著

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
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9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)