黒夜行

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問題な日本語 どこがおかしい?何がおかしい?(北原保雄)

そろそろな内容に入ろうと思います。
本書は、かつて相当話題になった日本語についての本です。今世間では(ウチの店でもですけど)、「日本人が知らない日本語」という本がバカ売れしていますけど、本書は結構真面目に日本語の正しさについて考える、という感じの本です。
著者は昔「KY式日本語」という本も出しています。「KY(空気読めない)」みたいな略語について解説した本です。また、「明鏡国語辞典」の編者でもあるようです。
凄いと思うのは、もう既に70代なのに、若者の言葉の使い方とかにもきちんとアンテナを張っているということですね。「KY式日本語」も若者言葉でしたが、本書でも若者が使っているちょっと変な言葉遣いについても多々触れていて、よく観察しているんだなぁと思いました。
本書は、一般の人から寄せられた、最近気になる日本語の使い方についての質問がまず載っていて、それに答える形で日本語についての説明が進んでいく形になります。
例えばこんな質問があります。

『「全然いい」「全然平気だ」などの言い方をよく聞きますが、「全然」を肯定表現に使うのは間違いではないのでしょうか?』

これはよく言われますね。僕も、全然を肯定表現で使うことに特に抵抗がない人間だったりします。「全然余裕だよ」みたいな感じですね。
ここの話はなかなか面白かったです。「全然」という言葉には、「まったく」「まるっきり」などというような肯定表現で使われる意味もあって、夏目漱石や芥川龍之介の作品なんかにも出てくるとか。
一方で、最近の若者が使っているような肯定表現についてだけど、これも肯定表現に対して使っているのか、という疑問を呈します。例えばさっき僕が書いた「全然余裕だよ」という言葉も、次のような状況で使います。
「あんた宿題大丈夫なわけ?」
「全然余裕だよ」
これを著者は、否定的な状況あるいは心配な状況・懸念をくつがえし、まったく問題がないという場合に使う、と説明しています。つまり、まるっきり肯定的な使い方をしているというわけでもないんです。
著者のいる大学で昔ある学生がこの「全然」について使用の実態をレポートにしたことがあるらしいですけど、そこでその学生は、<あなたが思っていることとは違って>という限定で使うのだ、と書いていたようで、著者は優れた着眼だと感心したらしいです。
そういうわけで、肯定表現に「全然」を使っているように思えるからと言って、すぐさま誤用だと断じるのはいかがなものか、ということが書かれています。
こういう風に、ただ間違っている合っているということを書くだけではなくて、問題を細分化して答えたり、あるいは誤用である場合にしても、じゃあ何故そういう風な誤用が生まれたのかという背景についても説明をしていて面白いなと思いました。
バイト先でスタッフが言っていて僕が結構気になるのが、「~の方」という表現で、それも本書に載っています。よくスタッフが、「お会計の方が○○円になります」とか言っているのを聞いて、突っ込みどころが二つもあるなぁ、と思うんだけど、この「~の方」も、状況によってはオッケーだそうです。ただやっぱり、「お会計の方が○○円になります」はダメですけどね。
「お会計の方が○○円になります」のもう一つの突っ込みどころである「~なります」という表現についても載っています。
これについては、誤用かどうかというよりも、両者の解釈の違いによる誤解が生まれやすい表現だ、と書いています。
「こちら和風セットになります」という文章で考えてみます。
提供側としては、「~なります」という表現によって、自信満々に提供するのではなくて「これではたしてお客様のご期待に添えるかどうかわかりませんが」という謙虚な姿勢を示しているし、仮にお客さんの予想から外れてもその客だけ特別扱いしているわけではなく、それがその店の既定の和風セットであるということも示すことが出来ます。
しかしお客さんの方としては、自分が注文したメニュー通りのものが提供されることを期待しています。そのような場面で「なる」が使われると、何か新しい状況が生じるのかと思い、何か変化が起こるのだろうかと考えます。それなのに、注文した通りの和風セットがくるのでおかしいと感じる、というような説明でした。
なので、上記のような場合だと、明らかに誤用だとは言いにくいようですね。ただ「お会計の方が○○円になります」は明らかに誤用ですね。そこは自信満々に言ってもらわないとお客さんとしても困るでしょう。また、「雰囲気」の話も載っています。これ、僕もそうなんですけど、どうしても「ふいんき」って読んじゃうんですよね。なかなか「ふんいき」とは読めない。さすがにパソコンで書くときなんかはちゃんと「ふんいき」って書いてから変換しますけど、読むときは「ふいんき」って変換されちゃいます。
本書に載ってたエピソードで、ワープロソフトの会社に「「ふいんき」で漢字変換できないなんておかしい」という若者らしいユーザーからのメールが来たことがある、というのも載っていました。その若者は、本当に「雰囲気」を「ふいんき」だと思っているんでしょうね。
ただ本書は面白い例が載っていました。
例えば「山茶花」っていう花がありますよね。今僕も「さざんか」って書いて変換すると「山茶花」になりましたけど、これってもともと「さんざか」って名前だったみたいです。それがいつの間にか「さざんか」で定着したのだとか。だから、「雰囲気」についても、いつか読みが「ふいんき」で定着する日が来るかもしれません。
まあそんな感じで、いろいろと日本語について詳しいことが分かる本です。特に、最近の若者の言葉の使い方に納得のいかない人なんかが読んだらいいかなと思います。若者が使っている言葉でも、明らかに誤用とは言い難いものもあるんだ、ということが分かって面白いんじゃないかなと思います。まあ、間違っているものの方がやっぱり多いですけどね。
敬語の本とかも一回ぐらい読んでみようかな。ちゃんと敬語喋れないしなぁ。こういう本を読むと、日本語ってのもなかなか面白いなと思います。興味がある人は読んでみてください。

北原保雄「問題な日本語 どこがおかしい?何がおかしい?」



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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)