黒夜行

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オタク女子研究 腐女子思想大系(杉浦由美子)

そろそろ内容に入ろうと思います。
本書はタイトルの通り、腐女子、即ち女性のオタクについていろんなことが書いてある本です。
腐女子という言葉は、「腐女子彼女」というブログ本がヒットしてから一般的にも認知されるようになったと思うんですけど、どうでしょうか。あと、貴腐人とか汚蝶夫人みたいな言い方もあるみたいですけど、やぱり腐女子が一般的ではないかと。
腐女子というのは、広義に捉えると女性のオタク全般を指すようです。ジャニーズオタクや宝塚オタクなんかも含める、ということですね。しかし腐女子というのは狭義では、BL作品(男同士の恋愛やらセックスやらを描いた小説や漫画)が好きなオタクということになります。本書でも基本的には、腐女子という言葉はその狭義の意味で使われています。
著者の杉浦由美子さん自身も腐女子のようです。どうして本書を書くことになったかと言えば、そもそも女性のオタクの存在が表に出てこず、まるで存在しないかのように思われているようなので、ここは一つ腐女子について書いてみようか、となったよう。
男のオタクについては、「電車男」なんかのヒットでその存在が大きく知れ渡ることになりましたが、確かに女性のオタクというのは謎に包まれている。僕は幸いにも(?)リアル腐女子を一人知っているのでその生態についてそれなりに知っているし、「腐女子彼女」っていう本も面白く読んだのでなんとなく分かっているつもりではあるんですけど、一般的には女性のオタクというのは謎ですよね。
僕が知ってる腐女子は、「僕の周りにも腐女子は必ずいる。いないわけがない」と力説します。女性の半分は腐女子だ、とまでいいます。そうなんだろうか?僕がこれまで知りあってきた女性の中には、外から見て腐女子だと分かるような人はいなかったと思います。本当に彼女たちの中にも腐女子はいるんだろうか?
腐女子の存在が表に出てこない理由の一つは、腐女子は妄想をメインにしている、というところがあります。男のオタクは、グッズを集めたりというような部分がありますが、腐女子はあんまりそういうことはない。本やコミックを元にして、あるいは目の前にいる男二人を元にして頭の中で妄想を組み立てる。だから分からない。
さらに腐女子は、身なりにもきちんとお金を掛けています。男のオタクは服装や見た目にはこだわらないため、ひと目でそれと分かりますが、腐女子はそうではない。すごく綺麗な人も多いらしいし、最低限化粧品や服にもお金を使う。だから外から見ただけでは分からないのです。
昔三浦しをんのエッセイに載っていた、腐女子判定テストというのが面白いのでここに載せてみます。
誰でもいいから女性に、「今から僕が言う言葉の反対の言葉を言ってください」と言います。その後、何でもいいから言います。「北」「南」、「右」「左」「勝ち」「負け」、「前」「後ろ」…という感じです。出来る限り相手に即答させる、というのが大事です。
で、そろそろいいかなという時に「攻め」と言ってください。
もし相手が腐女子なら「受け」と答えるでしょう。腐女子でないなら「守り」と答えると思います。
これが三浦しをんの提唱する腐女子判定テストです。まあそう簡単に引っかかるかは分かりませんけどね。
本書では、男のオタクとの違い、腐女子の歴史、池袋の乙女ロード、BL作品の種類、「攻め」「受け」のレクチャー、腐女子の日常などいろんなことが取り上げられています。正直言って、その理屈は論理が通ってないだろ、と突っ込みたくなるような部分もありますが(雑誌なんかを見てもそうだけど、日本はフランス人が一番だと思っている。フランス人は二日に一回はセックスをしないといけない種族。だから日本でも、セックス至上主義がはびこっているのだ、という理屈は僕には意味不明でした)、基本的には面白い切り口だと思える部分も多いし、なるほどそうなのかと思えう部分もある。リアルに腐女子を知っているために、書いている内容についてなかなか理解しやすい、という部分もあるのかもしれないけど、全体的には面白い作品だと思いました。
以下、いろいろと気になった話を書こうと思います。
まず、男のオタクと腐女子との大きな違い。男のオタクは、現実逃避としてオタクに向かう。現実の女性とうまくいかないから、二次元の女性に走り、あまつさえ二次元の女性こそが理想の女性なのだ、と考えるようになる。
でも腐女子はそうじゃない。腐女子は現実でもきちんと恋愛をしたり結婚をしたりする。現実で叶わないものをオタクへと投影するということはしない、という話。
男のオタクにとって萌えは現実の代償行為であることが多いのに対し、腐女子はそうではなくあくまでも別腹である、というのはなかなか面白いなと思いました。
腐女子はBLにリアリティを求めていない、というのもなかなか新鮮な意見でした。ちょっと違いますね。リアリティを求めていないのではなくて、リアリティが気になるからこそ、それを超越した作品を求めている、ということになるでしょうか。腐女子にとって、いかにありえない恋愛・セックスであるか、という部分が大事なんだそうです。
例えばロマンス小説というジャンルがあります。これは日本人作家の作品ではあまり売れないらしい。何故かというと、日本人作家が日本を舞台にしてロマンス小説を書く場合、あまり売れないんだそうです。何故なら、それがどんな状況であれ、日本という舞台だと突っ込みどころがたくさん出てきてしまうからなんだそう。例えば本書では深夜のコンビニで中小企業の営業職の私がおにぎりを買いにきた年棒10億のプロ野球選手と出会う…、なんてストーリーがあった場合、女性は、どうせこのプロ野球選手は親の作った借金で首が回らなくなってるとか、深夜のコンビニでおにぎり買うとかプロとしてダメじゃん、とか突っ込みたくなるらしい。
でもそれが海外を舞台にしていれば、なるほどそういうこともあるのかもしれない、と寛容になれるのだとか。
腐女子にもこれと同じことが言えるようです。男と女の恋愛では、いろいろと突っ込みどころが生じる。だから、それが男と男の恋愛を描くBLの場合、まずそのありえなさによって寛容になれるんだそう。しかも、男と男の恋愛、という部分だけでなく、その設定なんかについてもありえなさが満載。管理職のおっさんが入ってきたばかりの新入社員に告白されるだの、御曹司ばっかり集まる男子校でうんたらかんたらなど、そういうありえない設定によっても、腐女子は寛容になれる。だからこそ、BLという枠組みはすごくいいのだ、ということらしいです。
また、これは腐女子に限りませんが、女性がなぜオナニーの話をしないのか、という考察はなかなか面白かったです。
男の場合、オナニーのオカズにするものは、エロ本やらAVやら、いずれにしても自分の外部にあるものです。だから別に話したところで恥ずかしいことはない。
でも女性の場合はそうではない。女性の場合、基本的に妄想をオカズにします。それも、「満員電車で汚いオヤジに凌辱される自分」とか「白馬に乗った王女様の自分が美少年を助け出してセックスをする」と言った内容のことを妄想するんだそうです。
つまり突き詰めると、女性の場合オカズとなるものが「自分自身」なんですね。だからこそ話すのが恥ずかしい、というような考察でした。
まあこの考察が正しいかどうかは別として、なかなか面白い発想だなと思いました。
まあ別に読んでも読まなくてもどっちでもいい本ではありますが、読んだら読んだで面白いと思います。なかなかその生態を知る機会のない腐女子について詳しくなれますよ。腐女子は奥さんにするには最適だそうですよ、男子諸君。その理由はぜひ本書を読んでみてください。

追記)amazonのレビューを読むと、腐女子からすると本書の記述は事実誤認が多いんだとか。これが腐女子だと思われても困る、というコメントもありました。なかなか難しいですね。誰か、これが腐女子研究の決定版だ、みたいな本を出せばいいのに。誰にメリットがあるのかよく分かりませんけどね(笑)

杉浦由美子「オタク女子研究 腐女子思想大系」



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10位 辻村深月「島はぼくらと
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15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
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5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
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6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
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13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
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コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
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9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
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18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
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新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
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4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
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6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
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10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
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2011年の個人的ベストです
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
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10位 原田マハ「キネマの神様
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)