黒夜行

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ZOKURANGER(森博嗣)

というわけでそろそろ内容に入ろうと思います。
本書は、「ZOKU」「ZOKUDAM」と続く「ZOKU」シリーズの第三弾(で確か最終巻)です。「ZOKU」は二人の人間がお金を掛けてお互いにイタズラを仕掛け合うという話、「ZOKUDAM」は某有名テーマパークの地下で秘密裏に巨大ロボを作っているという話、そして今回は大学のある委員会のメンバーが戦隊ヒーローのようなユニフォームを着る、というような話です。
研究環境改善委員会のメンバーは、ロミ・品川(イエロー)、永良野乃(ピンク)、ケン・十河(ブルー)、バーブ・斎藤(グリーン)、揖斐純弥(レッド)の五人に、委員長の木曽川大安だ。本書は5つの章から成っていて、各章の主人公が委員長を除く研究環境改善委員会のメンバーになっている。
ロミ・品川は民間企業から大学にやってきた異色の人物だ。大学については右も左も分からない状態だが、実に奇妙な場所であるということはなんとなくわかってきた。委員会もその一つだ。大抵委員長が喋っているだけで議論はない。他のメンバーがいる必要性が感じられないが、しかしそんな委員会がたくさんある。ロミ・品川もいくつもの委員にさせられた。
その一つが研究環境改善委員会だ。この委員会も他の委員会とさほど変わらないと思われた。しかしどこか違う。何かがおかしい。永良野乃が体のサイズを測りに来た。ユニフォームがあるという。ユニフォーム?それを着て一体何をするというのだ。いくら大学が奇妙なところだからと言っても、この奇妙さはおかしいのではないか…。
というのが第一章の話で、それから続く章で他のメンバーの語りになる。永良野乃はちょっと変わった趣味がある。ケン・十河もちょっと変わった趣味がある。バーブ・斎藤にはちょっと変わった能力がある。揖斐純弥にもちょっと変わった能力があり…。
というような話です。
いやはや実に面白い。僕はこの「ZOKU」シリーズは大好きなんですけど、「ZOKU」よりも「ZOKUDAM」の方が、そして「ZOKUDAM」よりも「ZOKURANGER」の方が面白いなぁと思うわけなんです。
とにかく、実に馬鹿馬鹿しい話です。ここまでシュールな展開もないでしょう。大学の委員会の一つが、戦隊ヒーローのような格好をして何か奇妙なことをするだけ、基本的にそれだけの話なんですけど、何でこんなに面白いんでしょう。
本書の面白さの理由はいろいろあるでしょうが、まず大学というのが舞台になっているのが面白いですね。多少誇張している部分もあるんでしょうけど、本書を読むと大学というのは本当に変なところなんだな、というのがよく分かります。実際に国立大学の助教授(今は准教授というらしいですけど)だった著者だからこそ、この雰囲気が出せるのだと思います。いかに変わった人種が揃っているか、いかに無駄な仕事が多いか、というようなことがすごく良く分かるし、また大学に対する森博嗣のスタンスみたいなものも何となく透けて見える気がして(まあ森博嗣に言わせたら、小説に自分の主張や意見を盛り込んでいるつもりはない、となるでしょうが)、面白いと思います。
それに加えて、登場人物が非常に面白い。基本的にストーリーに関わるのは研究環境改善委員会のメンバーくらいですけど、実に多彩なメンバーです。ロミ・品川は研究環境改善委員会の奇妙さに健全な反応をしますが、他のメンバーは既に慣れ切っているために疑問を抱くことはありません。そればかりか、メンバーはもう妄想家ばかりで、その妄想力を駆使してとんでもないことばかり考えるような連中です。ネタばれになるので詳しいことは言えませんが、その妄想がとにかくすごい。しかもその妄想がそれぞれのキャラクターをよく表しているわけで、委員会のメンバーのキャラクターを楽しむという読み方も面白いです。
ストーリーは正直あってないようなものですけど、ラストに行くにしたがってどんどんと荒唐無稽な展開になっていきます。常識的な判断をするロミ・品川の章から物語に入った読者としては、初めと終わりのあまりの落差に驚くのではないでしょうか。あれ、いつの間にこんな話になったんだっけ?というような展開です。まったく変な話を書く作家ですけど、本当に本書も変な作品だなと思います。
実に脱力的な設定・展開の作品ではありますが、舞台となる大学の描写が実にリアルなので、そのギャップも面白い作品です。「ZOKU」シリーズの三作は一応シリーズではありますが、話自体はまったくつながっていないのでどれから読んでも問題ありません。森博嗣のミステリーを読んでダメだったという方も、再チャレンジしてみてはどうでしょうか。ユルユルの作品で面白いですよ。

森博嗣「ZOKURANGER」





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2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
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5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
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8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
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19位 奥泉光「黄色い水着の謎
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新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
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2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
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18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
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6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
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小説以外
1位 「死のテレビ実験
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)