黒夜行

左脇のプロフィールにある「サイト全体の索引」から読みたい記事を探して下さい。

プリンセス・トヨトミ(万城目学)

いつも同じことを書いている気がしますが、今日もすこぶる時間がないので、書店の話はすっ飛ばして内容に入ろうと思います。
国の組織に、司法・立法・行政から独立した、会計検査院というところがある。国の財源からの収支がある様々な団体について、適切なお金の使い方をしているのかをチェックする機関だ。
その会計検査院に所属する、松平・鳥居・旭というのが一方の主人公だ。「鬼の松平」と呼ばれる厳しい検査をすることで有名なアイス好きの松平、へにゃへにゃしてさほど使えないが時々とんでもないミラクルを引き起こす鳥居、ハーフで容姿端麗、かつとんでもないエリートという旭は、一週間の予定で大阪へ出張し、大阪のあらゆる団体の検査をすることになった。
検査を順調に終えた彼らだったが、唯一OJOと呼ばれる団体のみ検査そのものが出来なかった。仕方ないと諦め東京に戻ろうとしたが、墓参りに行くという理由で松平は大阪に残った。そこで松平は、大阪の真の姿を見ることになるのだが…。
さてもう一方の主人公は、大阪市立空堀中学校に通う二人の少女、もとい一人の少年と一人の少女である。
「太閤」という名のお好み焼屋の息子である大輔は、入学式の日とある決意を持って朝を迎える。家族とも話し合いを重ねた末の決断だ。
セーラー服を着て学校に行く。
大輔は、幼い頃からずっと女の子になりたいと思っていた。ずっとあらゆる神社を見つけてはお参りをし続けた。しかしもちろん朝起きたら勝手に女の子になってるなんてことがあるわけがない。そこで行動に移すことにしたのだ。
大輔の幼馴染みで、昔から大輔をかばいながら寄り添ってきた茶子は、セーラー服を着ていくという大輔の味方だった。セーラー服を着て行った大輔は、学校で様々な視線やトラブルに巻き込まれることになり、茶子も大輔を守るために奔走することになる。
ある日、理由を告げられぬまま、学校にいた大輔は父親に呼び戻された。よくわからないまま父親についていくと、大輔はそこで大阪の真の姿を目にすることになるのだが…。
というような話です。
相変わらず面白いことは確かですが、「鴨川ホルモー」とか「鹿男あをによし」とかの方が好きだなぁという感じがしました。
本作はハチャメチャっぷりがちょっと足りないような気がするんです。もちろん、「鴨川ホルモー」のホルモーっていう変な競技や、あるいは「鹿男あをによし」の鹿が喋るみたいな、そういうストーリーの根幹を成す部分での大仕掛けはあるんだけど、でもそうじゃない部分の小さな楽しい小仕掛けみたいなものが少ないかなぁという感じです。ストーリー自体は、よくもまあこんなへんてこな話を思いつけるものだと思うし、それをよく真面目な顔をしてもっともらしく語れるものだと感心するんだけど、クスクスしたりニヤニヤしたり出来る部分が全体的にちょっと少ないような感じがして、それがちょっと残念だったかなという気はします。
しかしストーリーは相変わらず破天荒ですね。壮大さで言えばもちろん過去最高だし、SF作品以外でこれほどの大風呂敷を広げる作品というのもそうそうないだろうなという気はします。読んでて、実際こんなのがホントにあったら楽しいかもしれないな、と思います。大阪という土地を舞台にしたというのも良いですね。大阪だったら、もしかしたらありえるかも、なんて風に思えちゃったりします。これが他の土地だと、リアルには感じられなかったかもしれません。多くの人が持っている大阪という土地のイメージをうまく使っているんだろうなという感じがしました。
本作では、ボタンの掛け違えみたいな状況が多々あって、それによって最終的にとんでもない出来事に発展してきます。ありえないだろそんな勘違い、と思わせる状況でも、万城目学が描くとそれっぽく思わされてしまうんですね。そのボタンの掛け違えの中心にいるのが大抵鳥居という男で、なかなか面白いキャラクターだなと思いました。まさにミラクルを起こす男、という感じで、しかも最後まで結局何が起こったか分かっていないというところもいいですね。
ストーリーと絡んだところで言えば、大輔のキャラクター設定もうまいなと思いました。なるほど、最後大輔の設定がこんな形で活かされるのか、と感心しました。デビュー作からそうでしたが、相変わらず構成や展開は非常にうまいと思います。
茶子のキャラクターが実にいいですね。女の子なんだけど、大輔を守るためならまさに体も張るという感じで、すごいです。友達に一人欲しい感じもするけど、でも行動を制御することが出来なさそうだからちょっと大変かもです。
旭は正直なところそこまで面白いキャラクターではないと思ったんだけど、最後の大阪府警でのやり取りが印象的でした。松平も、大活躍する割にはそこまで存在感のあるキャラクターではない気がするんだけど、最後父親を思い出すシーンは結構よかったです。
万城目学を勧めるとしたら、本作ではなく「鴨川ホルモー」や「鹿男あをによし」の方を勧めるでしょう。ただ本作も十分水準以上の作品ではあると思います。「鴨川ホルモー」なんかと同じようなレベルを求めて読むとちょっとダメかもしれないけど、面白い作品ではあると思います。大阪出身の人や大阪に住んでる人なんかが読むとより楽しいだろうと思います。

万城目学「プリンセス・トヨトミ」





関連記事
スポンサーサイト

Comment

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

http://blacknightgo.blog.fc2.com/tb.php/1428-0613fa47

【プリンセス・トヨトミ】 万城目学 著

大阪が完全に止まってしまったしかし、それが何の話題にもならなかった、恐怖…  まずは来訪記念のポチッ[:ひらめき:] [:next:] blogRanking[:右斜め上:]【あらすじ】5月末日の木曜日、大阪が完全に止まる。あらゆる種類の営業活動、商業活動、地下鉄、バス等の公共機関も一切停止。しかしそのことは大阪人以外は全く知らない。その発端となったのが、会計検査院からやってきた個性豊かな調査官3人と、空堀商店街にあるお好み焼屋の中学生の息子に、その幼馴染の女子。彼らが、大阪人に連綿と引き継がれてきた、秘

 | ホーム | 

プロフィール

通りすがり

Author:通りすがり
災害エバノ(災害時に役立ちそうな情報をまとめたサイト)

サイト全体の索引
--------------------------
著者名で記事を分けています

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行~わ行

乃木坂46関係の記事をまとめました
(「Nogizaka Journal」様に記事を掲載させていただいています)

本の感想以外の文章の索引(映画の感想もここにあります)

この本は、こんな人に読んで欲しい!!part1
この本は、こんな人に読んで欲しい!!part2

BL作品の感想をまとめました

管理人自身が選ぶ良記事リスト

アクセス数ランキングトップ50

TOEICの勉強を一切せずに、7ヶ月で485点から710点に上げた勉強法

一年間の勉強で、宅建・簿記2級を含む8つの資格に合格する勉強法

国語の授業が嫌いで仕方なかった僕が考える、「本の読み方・本屋の使い方」

2014の短歌まとめ



------------------------

本をたくさん読みます。
映画もたまに見ます。
短歌をやってた時期もあります。
資格を取りまくったこともあります。
英語を勉強してます。













下のバナーをクリックしていただけると、ブログのランキングが上がるっぽいです。気が向いた方、ご協力お願いします。
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

アフィリエイトです

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
14位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
11位
アクセスランキングを見る>>

アフィリエイトです

サイト内検索 作家名・作品名等を入れてみてくださいな

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

カウンター

2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)