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どがでもバンドやらいでか!(丁田政二郎)

さて今日は二つ感想を書く予定です。まず一つ目。
今回は、売れる本の条件みたいな話をしてみようかなと思います。大層なことは書けませんが。
ちょっと前に、本の雑誌社の杉江さんのブログ「炎の営業日誌」で、『本好きの人が良いっていう本ほど売れない』という話がありました。また、『本好きが読んだら欠点が目につく作品が読みやすくてベストセラーになっている』ともあります。
これは僕も実感としては非常によくあります。僕も二年ぐらい前からずっと同じことを思っていました。昔は僕は、自分が推したい本を売場に結構たくさん置いていたんですけど、そういう本は(僕の売り方の問題もあるんだろうけど)なかなか売れない。で、僕が読んで「これは大したことないなぁ」「どこが面白いんだろう」と思うような作品が世間的にベストセラーになって、売場に置いておくとバンバン売れていく、なんてことになるわけです。
世間的に大ベストセラーになっていった本(ちょっと前だと「モルヒネ」や「行きずりの街」など)を、こういう本が売れるんだなという分析のためになるべく読むようにしているんだけど、面白くないものが多いし、何で売れるんだかさっぱり理解できない。
それでもそういう本が実際にベストセラーになっていくわけで、つまり最近では『僕が読んで面白くないと思った本ほど売れる可能性がある』という無茶苦茶な考えに傾きつつあります。もっと正確に言えば、『ストーリーやキャラクターや構成は大したことはないんだけど、文章が読みやすい作品なら売れる可能性がある』ということだろうと思います。
しかしこれは正直難しいですね。僕としてはやっぱり売上を上げたいというのがあるので、きっちりと売れる本を揃えておきたい。でも最近の傾向だと、売れる本というのは本好きからすると大したことのないつまらない作品であることの方が多い。そうなると、売上のためにはそういう作品を置かざるおえないけど、そういう本ばっかり並べておくと今度は本好きの人が店から離れて行ってしまう、ということにもなりかねません。もちろん僕としてはバランスを取って、本好きの人にも楽しんでもらえる本を置くようにしていますけど、売れる本と面白い本というのがここまでかみ合わなくなってくると、売場作りが難しいなぁという気がします。
そういえばどこかで読んだ話ですが、「週刊ブックレビュー」という番組と「王様のブランチ」の違いがこういうところにあるんじゃないかという話です。「週刊ブックレビュー」の司会の女の人(名前は知らない)は結構本を読む人らしいんだけど、その人が紹介しても本はそこまで売れない。でも、「王様のブランチ」で優香が紹介すると売れる売れる。「優香の一泣き10万部」とも言われているそうで、「優香でも読めるんなら私でも大丈夫かも」と思わせるのではないか、と僕が読んだ文章には書いてありました。
いずれにしても、最近の人は読む力が失われているんだろうという気はするんです。ちょっと前も書きましたが、昔僕は当時18歳ぐらいだった女性に、伊坂幸太郎の「重力ピエロ」を貸したことがあるんですね。そしたら、「難しくて読めない」って言われたんですね。「過去と未来に行ったり来たりして難しい」なんだそうです。正直唖然としましたね。最近の子はそこまで文章が読めないものか、と。そりゃあ携帯小説とか読むしかないわなぁと思いました。
最近は、売れる本は滅茶苦茶売れるけど売れない本は全然、という売上格差時代になっています。それ自体も問題ですが、より問題なのは、どんな本なら売れるのかというのが昔以上に(恐らく僕が本屋で働く前と比べたらもっとでしょうが)わからなくなってきているということです。それは確かにやりがいがあるし面白い点でもあるのだけど、でも自分が良いと思った本があまり売れないというのでは微妙だなという感じはします。なかなか難しいものです。
そろそろ内容に入ろうと思います。
今回、またゲラをいただきまして、新人賞を受賞した作品だそうです。ちょっと調べたところ、この著者は俳優みたいなこともやっているみたいです。
舞台は1986年(という表記はないんだけど、チャレンジャー号が爆発したと年という表記があったんで調べてみました)の鳥取。高校生である宮田は、ロックにはまってギターをやり始めたのだけど、カシオペアというインストゥルメンタルバンド(ボーカルのいないバンド)に出会って大いにはまり、高校の文化祭である天神祭でバンドを組んで出ると決める。
しかし、元々組もうと思っていた相手に裏切られ、宮田はそいつのことを罵りながらも、新たにメンバー探しを開始することになった。
いろんなきっかけで集まってきたメンバーと共に、念願だったカシオペアをやれる。初めは全然うまくいかなかったけど、練習していく内にバンドらしくなっていった。 受験を控えながらも、天神祭という一瞬にひと夏すべてを掛ける宮田と、そんな宮田と共に一緒にバンドをやっていく個性的な面々の物語です。
基本的には最初から最後までバンドの話です。僕は読んだことはないんだけど、「青春デンデケデケデケ」って作品に近いものがあるんじゃないかなと思います。田舎でバンドをやろう、っていう設定が同じです。
正直読み始めはきつかったです。文章が、携帯小説みたいとは言わないけど(携帯小説なんかよりははるかにしっかりした文章だけど)、そっちよりの軽さの作品で、地の文が喋ってるような感じで進んでいくんですね。さっき僕が書いた理屈で言えば、読みやすいという理由で売れる要素になるかもしれないんだけど、読み始めはこの文章に慣れるのがきつかったですね。軽すぎて、もちろんスラスラ読めるんだけど、ちょっとどうなのかなぁという感じ。段々と慣れてはきたし、作品の雰囲気とも合ってるような気はしてくるんだけど、やっぱり僕としてはもう少し、勢いだけで書いたような文章ではなくて、軽さはあってもしっかりしている文章がよかったなぁという気はします。
ストーリーは平凡ですけど、まあなかなか面白いと思います。宮田がバンド探しに必死になっている理由、思っていたのとは違った形で集まったメンバー、うまくいかない練習、次第にまとまっていく連帯感、そして本番…というような、まあ王道でしょうね。起伏はないですけど、そこそこ面白く読めると思います。秋津のキャラがなかなかいいんじゃないかなと思います。
個人的には、本筋とはほとんど関係ないんだけど、宮田が片思いをしている館野っていう同級生とのくだりは結構好きでした。正直なところ館野に対する宮田の態度が全然高校生っぽい感じがしないんだけど(どこがどうっていえないけど、高校生男子ってそんなに大人かなぁという感じがしてしまう。まあそういうものかもしれないけど)、館野って女の子がなかなかいいキャラしてるんでいいなと思いました。
後本作の特徴と言うと、方言ですね。鳥取弁なのか、他に別に名前があるのか知らないけど、方言丸出しの会話です。僕はこれは結構好きですね。語尾に「だらぁ」ってつくのは、確か僕の地元もそんな感じだったので(僕は静岡出身です)懐かしい感じもしました。
冒頭で書いた話を踏まえると、本作は、本好きを満足させるレベルには届かないかもしれないけど、本をそこまで読まない人なら面白く読むかもしれない、とそんな感じの本だなと思いました。機会があったら読んでみてください。

丁田政二郎「どがでもバンドやらいでか!」




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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
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5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
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8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
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7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)