黒夜行

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よもつひらさか(今邑彩)

そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は、12編の短編が収録された短編集です。

「見知らぬあなた」
近所で発見されたバラバラ死体は、もしかしたら別れた夫かもしれない。そして殺したのは、長いこと誰なのかも分からず文通を続けていた相手かもしれない…。

「ささやく鏡」
ある時ふと鏡を見つけて、祖母の言葉を思い出した。決してむやみに見てはいけない、恐ろしい鏡だという言葉を。その鏡は、少し未来の自分の姿を写すのだったが…。

「茉莉花」
短編を依頼しにやってきた小説誌の編集者は、相手の作家から本名が嫌いだという話を聞くことになる。父がつけてくれた名前を嫌いになったのは、母が離魂だと説明した、ある不思議な出来事の後だった…。

「時を重ねて」
探偵をしている私は、旧友からある依頼をうけた。恐らく妻が浮気をしている。軽井沢までの一泊旅行に誰かと一緒にいくらしい。絶対に男だ。だから旅の間中尾行して欲しいんだが…。

「ハーフ・アンド・ハーフ」
とある理由から結婚し、一緒に暮らすことになった夫婦が、離婚することになった。離婚を切り出した夫は、妻のあまりにさばさばしている態度にホッとするが、家財道具などをすべてきっちり折半しないと気が済まないというのには少し閉口した。そう言えば、外で食事をする時もいつも折半だったが…。

「双頭の影」
変な骨董屋に入り、そこの店主から話を聞くことになった。それは店主が旅先で聞いたものらしく、寺の天井にあったという異形の染みについての話だった…。

「家に着くまで」
タクシーの運転手が、先日起ったある美人アナウンサーの死について話を振ってきた。運転手は独自の発想から、そのアナウンサーの死に新しい可能性を見出すのだが…。

「夢の中へ…」
現実のあまりの酷さと対照的に、夢の中の世界は素晴らしかった。現実とは真逆で、何もかもが自分にとって素晴らしい世界だった。ならば、夢の世界にずっといたい。プールの底に頭をぶつけて、ずっと昏睡状態のまま生きていたい…。

「穴二つ」
女のフリをしてパソコン通信をしていた良一は、女子大生だという女性とメールのやりとりをしていた。会ってみたいと言う良一に、考えさせてほしいと言った相手は、その後驚くべきことを告白するのだが…。

「遠い窓」
娘を亡くした画家が残したという一軒家に住み始めた私は、自分の部屋の壁に掛った絵が微妙に変化していることに気づいた。絵に描かれた建物の窓が開き、カーテンが掛かり、鳥かごがつるされ…。

「生まれ変わり」
若くして亡くなった叔母にそっくりな女性とたまたま見かけた男は、その女性を運命の女性だと思いこみ、二人は絶対に結ばれるはずだという信念の元に行動をするのだが…。

「よもつひらさか」
駆け落ちをした娘に、初孫が生まれたからと言って呼ばれた男は、「ひらさか」という名前の橋を渡っている時立ちくらみがした。その際助けてくれた青年と一緒に橋を渡ることにしたのだが、その話は一人で渡っていると幽霊が出て、あの世へと道連れにしようと手ぐすねを引いていると聞かされ…。

というような話です。短編集だと内容紹介が疲れるなぁ。
さて、これも仕掛けの候補をとして読んだ作品です。昨日読んだ「サンタクロースのせいにしよう」か本作のどっちかにしようと思うんだけど、難しいんだよなぁ。まあもう少し検討してみますが。
本作はなかなか面白い短編集だと思います。裏表紙の内容紹介ではホラーと書かれていますが、おどろおどろしい感じではありません。雰囲気的には「世にも奇妙な物語」をもう少し薄めたような感じというのが近いような気がします。
どの話も基本的には、「やっぱり一番怖いのは人間だよなぁ」と思わせる話です。狂気に取りつかれた人間の話だったり、あるいは狂気に取りつかれた人間に関わることになってしまった人の話だったりです。ほんの少し現実とは違った考えを持った人々が巻き起こす不思議な話という感じで、ホラーがダメという人でも全然読める作品だと思います。
僕が一番好きなのは、「双頭の影」です。これは、途中まであんまり面白くないかなぁと思ったんだけど、ラストがよかったです。正直なところ、最後の一文を読んでもどういうことかすぐには分からなかったんだけど、しばらく考えてわかりました。なるほど、ラストの一文がものすごく深いなぁと感心しました。
あと「ハーフ・アンド・ハーフ」も僕はかなり好きでした。本作は、基本的にはどの話もそうなんだけど、ミステリなんかを読んでてネタがすぐにわかってしまうような人はたぶんすぐオチがわかってしまうんじゃないかなと思います(僕は基本的にミステリを読んでても全然わからないんで、本作も時々しかオチが分からなかったけど)。この「ハーフ・アンド・ハーフ」も分かる人はすぐ分かっちゃうかもしれないけど、僕はもちろんわからなかったし、面白いと思ったなぁ。
「家に着くまで」はミステリとしてなかなか面白いと思ったし、「穴二つ」や「遠い窓」はラスト物悲しい感じになります。「見知らぬあなた」「ささやく鏡」「夢の中へ…」「生まれ変わり」なんかは狂気っていう感じでしょうかね。「時を重ねて」はロマンチックな話でこれも結構いい話だなと思いました。「よもつひらさか」も分かりやすいけど、話としては面白いと思います。
読みやすい文章で、ちょっと不思議でオチの利いた話を読ませてくれます。とにかく読みやすくてさらさらいけます。今邑彩は調べてみるとかなり評判のいい作家なんで他にもいろいろ読んでみたいと思うんだけど、いかんせん出版社でも品切れの作品ばっかりなんですよね。どうしたものやら。軽いミステリタッチのホラーを読みたいと思ったら読んでみてください。


今邑彩「よもつひらさか」




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Comment

[3444]

はじめまして!楽しく拝見しています。ハーフアンドハーフは実際に「世にも~」で使われていましたよ。別タイトルでしたが。。。

[3445]

はじめましてです!こんな辺境のブログを読んでくれているようで、嬉しい限りです!
やっぱり世にも奇妙な~っぽい雰囲気しましたもんね。世にも奇妙な~ってまだやってます?昔はよく見てましたけどねぇ。

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)