黒夜行

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インターセックス(帚木蓬生)

いつものごとく時間がないので、今日はさらっと書きます。
今日はPOPの話でも書こうかなと思います。
今では書店にPOPというのはなくてはならないと言ってもいいような存在になりましたが、ちょっと前まではそうでもなかったそうです。特にデパートなんかのインショップの場合、スタッフによる手書きPOPは一切禁止、なんていうこともあったようです。
それが変わったのが、とある小さな書店が仕掛けたある本によってです。「白い犬とワルツを」という本を、店主の手書きPOPと共に売ったところ、正確な数字は知りませんがとんでもない数を売ることに成功しそこから全国展開に波及、最終的に200万部を超える売上を記録したんだそうです。そこからスタッフによる手書きPOPが奨励されるようになっていった、と言われています。
僕はとにかくゴテゴテとPOPをつけてしまう方なんですけど、お客さんとしてはPOPの存在をどう思っているのだろう、といつも気になります。駅前の本屋にはPOPはほぼついていなくて、売り場がすっきりしています。POPがないので取りやすかったりもすると思います。僕の売り場は反対に、これでもかというくらいPOPがたくさんついています。スタッフに作ってもらったものもあれば、出版社から送られてきたものもあります。あちこちについているので、売り場の本が取りにくくなっているという面は否めません。
それでも僕はやっぱり、POPは出来る限りつけたい、と思っています。どの書店に行っても同じものを売っているのだから、やはりPOPなんかで差別化をしたい、という理由です。本が取りにくい売り場はあまり歓迎できないかもしれませんが、以前探しやすさを犠牲にしてでも面白い並べ方を、という話を書いたように、取りやすさを多少犠牲にしてでもPOPをつけたい、と思うわけです。
僕自身はPOPを作る才能はまったくないのでいつもスタッフに作ってもらっています。ウチの店にはPOP職人と言っていいスタッフが結構いて、僕は文章と大体の雰囲気を伝えて、後は任せています。なかなかいいPOPを作ってくれるのでいつも助かっています。
でもいつも悩むのが、POPにはどんな情報が必要なのだろうか、ということです。僕はずっと、POPは目立てばいい、と思ってやってきました。売り場にあって、どんな形でもいいからそのPOPが目立つ。お客さんが気になって手に取る。後はお客さんが判断する、という感じです。だからどんな内容なのかとかどんな感想を持ったのかということよりも、いかにそのPOPを目立たせるか、ということを優先してきました。
でも最近は、やっぱり読んだ人間の感想みたいなものがきっちり入っているべきなのか、とも思います。目立つだけではなく、読みたいと思わせるような文章が入っているべきなのかな、と。しかし、読む前に言葉で印象を与えてしまうのもあんまり好きではなかったりします。こっちが買えよ買えよなんていう雰囲気を出すのではなく、お客さん自身が選んだのだと思って欲しいんですね。
その辺りがPOPの難しいところだよな、と思います。昨日も三つほど作ってもらうPOPについて考えましたが、未だにどういうPOPがベストなのか試行錯誤です。
そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は、途中まで僕は知りませんでしたが、どうやら「エンブリオ」という作品の続編のようです。僕は「エンブリオ」を読まずに本作を読んだので、全体的にはちょっと消化不良という感じでした。
泌尿婦人科医という変わった専門の女医・秋野翔子は、妊娠から出産までに関わるあらゆる事柄に携わっている医師だ。市立の病院で働いていたが、あるきっかけでサンビーチ病院に引き抜かれることになった。サンビーチ病院を創り上げた院長である岸川は、生殖と移植に関しては「神の手を持つ名医」と評判が高い。
岸川は、インターセックスと呼ばれる人々への性転換手術などを積極的に行ってきた。インターセックスとは半陰陽とも呼ばれ、遺伝子の異常のため性器の形状や染色体が曖昧なまま生まれてきてしまうもので、インターセックスを広義で捉えると、100人に一人くらいの割合で生まれる。秋野は、インターセックスの患者に性転換手術を強制するべきではないと考え、人知れず悩んでいる患者を受け持ち、奔走する。
サンビーチ病院は素晴らしい病院で、赴任後すぐドイツの学会にも行かせてもらえ、そこでインターセックスに関して非常に感銘を受ける経験をすることも出来た。しかしその一方で、院長・岸川の周囲では不可解な変死が続いていることに気づき、調べを進めることにしたのだが…。
というような話です。
正直なところ、たぶん「エンブリオ」を読んでいないとイマイチよく分からないストーリーなんだと思います。たぶん、「エンブリオ」で描かれたことを別の方面から描いてみたというような作品で、この作品だけで独立で評価できるかと聞かれると、ちょっと何とも言いがたいです。少なくとも、サンビーチ病院で何をしているのか、という部分については、本作を読んでもイマイチ何とも掴めません。最後の最後で分かることは分かりますが、やっぱり「エンブリオ」を読んでいることが前提になっているような気がします。
ただ、インターセックスに関わる部分はかなり興味深く読めました。本作ではこのインターセックスの部分がメインになっていて、その合間にサンビーチ病院の黒い影みたいな話がチラホラ出てきます。そっちの黒い影の方の話は、やはり本作ではどうしても消化不良になってしまうような気がするんですけど、インターセックスに関する部分だけ取り出すと、かなり深くまで掘り下げているという感じがして、非常に面白かったです。
帯には、「世界初のテーマに挑む」とあります。まあ本当に世界初なのかどうかは良く分かりませんが、でも確かにインターセックスを真正面から扱った作品というのはなかなかないかもしれないですね。時々ミステリ何かでは、こう言う半陰陽の存在なんかが出てきたりしていたように思いますけどね。
このインターセックスというのはなかなか大変なのだなと思いました。僕が一番驚いたのは、広義に捉えるとインターセックスというのが100人に一人くらいいる、という事実です。つまり日本国民では100万人ぐらいはいるということになりますよね。それくらいなら、自分の周囲にも一人くらいいてもおかしくない、と思えるような数字です。インターセックスというのは、なかなか人には言えないものでしょうし、出来る限り隠したいと思うような性質のものだと思うので世に知られないだけで、それで悩んでいる人というのは結構な数いるのだなという部分にまず驚きました。
また生き方も境遇も人それぞれで、しかも皆悩んでいるんです。まあ悩むのは当然でしょう。自分の身体が他の人と違うと気づいてしまえば悩まないわけにはいきません。そこから自分がどんな生き方を選択するのか、という苦しみを経て、インターセックスの人々は人生を歩んでいくわけです。
本作では、インターセックスの人々による自助グループというようなのが出てきて、翔子の前でそれぞれが自分の人生について語るという場面が出てきます。もちろん本作で描かれているのはフィクションでしょうが、著者ももちろん取材をしたでしょうし、実際の話も織り交ぜながらだと思います。男か女かという二つに性を分けなくてはいけない、という暗黙の了解の中で生きていくことの難しさを知りました。
また本作では、性差医療という初めて聞くような話も知りました。性差医療というのは、男と女の身体は元々違うのに、投薬や治療の方法が同じなのはおかしい、というところから始まっているそうです。日本では、様々な理屈をつけて薬の治験では女性が排除されているんだそうです。つまり、男のデータだけで薬が作られ、それが普通に女性にも使われているんです。最近の研究では、薬も男と女とでは効果に差があることが分かっているし、病気の発現の仕方にも差があると分かっているんだそうです。そういう性差医療という、これまで知らなかったことを知れたというのもなかなか面白かったなと思いました。
小説としては、やはり本作単独ではなかなか評価できないです。「エンブリオ」を読んでいないとなかなか微妙だと思います。そういう意味ではちょっとダメな作品なんですけど、でも非常に興味深い話がたくさん出てくる小説でもあるので、そういう部分については面白く読めると思います。世界初かどうかは別として、小説としてはなかなか珍しいものをテーマに選んでいます。インターセックスや性差医療について読んでみたいと思う方は結構面白いと思いますよ。

帚木蓬生「インターセックス」





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[3384]

どうも書店員のbakuです。
POP製作は難しいですよね。文庫・新書を担当でされてるとなると、なおさら色々在庫とかの兼ね合いもあって。ただ面白かったモノにつければいいというわけにはいかないでしょうし…。
僕なんかは、担当ではないので自分が読んで良かったものに、レジや作業の合間に半ば趣味感覚でノンビリPOPを作っているので最高に楽しいですね。先日、ジェフリー・ディーヴァーの「コフィン・ダンサー」のPOPを作ってみたら早速一冊売れていて、一人で自己満足に浸ってましたww
書店員のアレコレいいですね。普段、各担当さんがどんな仕事をしているのとか詳しく知らなかったので、参考になります。ではまた。

[3385]

おはようございます。
POPは、僕は自分では作れないんですよね。だからいつも誰かに頼んで作ってもらっています。自分で作れるなんて、bakuさんはすごいですね。羨ましいです!
誰かに作ってって言われなくても作るってことですか?それで、担当者は使ってくれる、と。それはいい環境ですね。いや、そうやって楽しく仕事をするのが一番だと思います!自分でPOPを作った本が売れたりすると嬉しいですしね。
書店員の話は、もう既にどうもネタがなくなりつつありますが、しばらくは頑張ってみます。まあでも、どの店でも同じやり方をしてるかっていうとそうでもないでしょうから、あくまでも参考程度ということで。

[3386]

こんばんは。
明日(もう今日)から11月というのが信じられないですね(笑)。何かと忙しいまま今年も終わりそう…と嫌な予感がします(泣)。
この本とは関係がありませんが、帚木さんの『閉鎖病棟』という作品を読みました。私にとっては初帚木作品です。
精神病棟の話ですが、ここに入院する患者のこれまでの人生を考えると、何か胸が詰まる想いです。元医師や元自衛隊員、殺人を犯した人、良家のお嬢様、、、色々な経歴の持ち主です。でも、皆 優しさだけは誰にも負けないものを持っています。帚木さんは現役の医師だそうですね。海堂さん、南木さんと作家と医師の兼業という方の作品を読んできましたので、やや免疫はつきましたが、それにしても三人三様ですね(笑)。古くは森鴎外、齋藤茂吉に始まり、現在も脈々と続く流れがあるのでしょう。
『閉鎖病棟』はヒューマンタッチの作品で、患者だけでなく医師やスタッフがまた好人物です。かなり居心地の好さそうな病院ですが、やはり自宅の好さには敵うはずもなく、退院後生き生きと過ごす姿も書かれていました。それ以外に重い話も挿入されますが、全体的には温かい雰囲気でした。帚木蓬生さんのお名前の「帚木」も「蓬生」も源氏物語から取ったそうです。文学通のお医者さまなのですね。
では、この辺で。好い休日をお過ごしくださいますように。

[3387]

こんばんわです。
ホント一年早すぎますね。まだ半年ぐらいしか経ってないようなイメージなんですけどねぇ。
「閉鎖病棟」は僕も読んだことがありますよ。ここの感想にはなかったかな?ということは、かなり昔に読んだということでしょう。
というわけで、もう内容についてはほぼ覚えていませんが、全然面白くなかったということだけは覚えています。ドラさん的には悪くない評価のようですけど、僕には向かなかったですねぇ。昔この作品が何故か全国的にバカ売れしたことがありまして、僕は一体何事かと思いましたよ。
帚木逢生は経歴が凄いですよね。確か覚えている限りでは、TBSに入社してから大学の医学部に入りなおし医者になり、そこから作家ですからね。ちょっと無茶苦茶だなと思います。何でも出来る多彩な人なんでしょうね。小説家としては、そこまで成功しているとは言えないような気がしますけど…。
「帚木」も「逢生」も源氏物語の章の名前から取ったという話は僕も聞いたことがあります。しかし、「ははきぎ」なんて読める人、ほとんどいないでしょう。作家で「日明恩」ってのがいますけど、これが「たちもりめぐみ」って読むんですよ。読めないですよね。
ではでは。「大人の科学マガジン」っていう雑誌を買いました。組み立て式の二眼レフカメラが付録でついています。時間がある時に組み立てようと思います。

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12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
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3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
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コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
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10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
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12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
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20位 平川克美「株式会社という病

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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)