ネジ式ザゼツキー(島田荘司)
島田作品で、初めての大当たりだった。
内容はとにかく謎に満ち溢れている。お馴染みの名探偵御手洗潔の元に、エゴンという記憶喪失の男がやってくる。この男は御手洗と様々なやりとりをするのだが、短期的な記憶もおぼつかず、そうした状況から救って上げようと御手洗は努力することになる。エゴンは、自分はどこかに帰るべき場所があるのだが、それが思い出せないということで御手洗の元を訪れたのだ。
エゴンは記憶喪失になってから一編の童話を書いている。「タンジール蜜柑共和国への帰還」と題されたその童話は、蜜柑の樹の上にある村、ネジ式の関節を持つ妖精、人口筋肉で羽ばたく飛行機、鼻のない老人、何故か空を飛ぶことのできる空間。そういった様々な不思議な出来事が描かれている。御手洗はこの童話だけを元に、エゴンが一体何者で、どういった体験をし、何故記憶喪失になったのかを、その素晴らしい推理力で解き明かしていく。
真相が少しずつわかっていくにつれて、もうわくわくしてくる。一体どういう結末になるんだろう。どうこれを現実の世界に落とし込むのだろう、と興味が尽きない。「タンジール蜜柑共和国への帰還」という童話の挿入部を除けば、舞台は御手洗の研究室から動かない。登場人物も御手洗とハインリッヒ(彼が誰なのか俺は知らないけど)とエゴン、あと最後の方に数人出てくるぐらいで、本当に舞台で出来てしまうような場面展開と登場人物の少なさなんだけど、それなのに面白い。
今まで読んできた島田作品はあまり馴染めなかった。理由は恐らくその解決にあるだろうと思う。島田作品においては、謎の設定は天才的に魅力的だ。これでもかというほど不可解で現実的ではない謎が与えられる。それは確かに素晴らしいんだけど、それを解決する段になって強引さと無理矢理さが目立ってどうも好きになれなかった。
でも今回の解決はかなりスマートだし、納得できる。島田作品をこれからも読もう、と希望を持てた作品でした。
島田荘司「ネジ式ザゼツキー」
ネジ式ザゼツキー講談社ノベルス
内容はとにかく謎に満ち溢れている。お馴染みの名探偵御手洗潔の元に、エゴンという記憶喪失の男がやってくる。この男は御手洗と様々なやりとりをするのだが、短期的な記憶もおぼつかず、そうした状況から救って上げようと御手洗は努力することになる。エゴンは、自分はどこかに帰るべき場所があるのだが、それが思い出せないということで御手洗の元を訪れたのだ。
エゴンは記憶喪失になってから一編の童話を書いている。「タンジール蜜柑共和国への帰還」と題されたその童話は、蜜柑の樹の上にある村、ネジ式の関節を持つ妖精、人口筋肉で羽ばたく飛行機、鼻のない老人、何故か空を飛ぶことのできる空間。そういった様々な不思議な出来事が描かれている。御手洗はこの童話だけを元に、エゴンが一体何者で、どういった体験をし、何故記憶喪失になったのかを、その素晴らしい推理力で解き明かしていく。
真相が少しずつわかっていくにつれて、もうわくわくしてくる。一体どういう結末になるんだろう。どうこれを現実の世界に落とし込むのだろう、と興味が尽きない。「タンジール蜜柑共和国への帰還」という童話の挿入部を除けば、舞台は御手洗の研究室から動かない。登場人物も御手洗とハインリッヒ(彼が誰なのか俺は知らないけど)とエゴン、あと最後の方に数人出てくるぐらいで、本当に舞台で出来てしまうような場面展開と登場人物の少なさなんだけど、それなのに面白い。
今まで読んできた島田作品はあまり馴染めなかった。理由は恐らくその解決にあるだろうと思う。島田作品においては、謎の設定は天才的に魅力的だ。これでもかというほど不可解で現実的ではない謎が与えられる。それは確かに素晴らしいんだけど、それを解決する段になって強引さと無理矢理さが目立ってどうも好きになれなかった。
でも今回の解決はかなりスマートだし、納得できる。島田作品をこれからも読もう、と希望を持てた作品でした。
島田荘司「ネジ式ザゼツキー」
ネジ式ザゼツキー講談社ノベルス